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狂犬病検査用ウイルス株の導入に成功

SATRESフィリピン狂犬病対策プロジェクト1)(主幹:大分大学、フィリピン熱帯医学研究所)は、国際標準である狂犬病抗体検査法を確立するため、フィリピンに狂犬病検査用ウイルス株の導入に成功しました。

1)プロジェクト名称:JAPOHR (Japan and Philippines One Health Rabies) JAPOHRプロジェクト(SATREPS)では、簡便で安全に実施可能な新規狂犬病診断方法の導入とICT(情報通信技術)を活用した新しい狂犬病対策モデルを構築し社会実装することを目的としています。】

狂犬病は一旦発症すると治療法がなく、ほぼ100%死亡する極めて恐ろしい感染症です。フィリピンは狂犬病が最も蔓延している国の一つであり、毎年約200人の人々が狂犬病により死亡し、犬や猫に咬まれた100万人以上の人々がワクチンなどによる予防治療をうけています。

人も動物も狂犬病はワクチン接種による十分な免疫(狂犬病ウイルスに対する抗体)があれば予防することができます。そのため十分な免疫があるかどうかを調べる検査が重要になります。特に獣医師や動物管理に関わる職員など狂犬病に感染する危険がある人は、毎年のこの検査を受けることが推奨されています。また、犬や動物の輸出入検疫のときに必要になる狂犬病抗体検査証明書の発行にも必要な検査になります。
そのためWHOや国際獣疫事務局(OIE)はすべての国で国際標準抗体検査法(狂犬病ウイルス中和抗体測定法2))を実施する体制を整えるよう推奨しています。

2)Rapid Fluorescent Focus Inhibition Test (RFFIT)もしくはFluorescent Antibody Virus Neutralisation (FAVN)

この国際標準抗体検査法を行うためには、狂犬病検査用ウイルス株(CVS-11株)が必須です。しかし、フィリピン国内にはこのウイルス株がないため、その検査ができない状況にありました。

このような背景の元、JAPOHRプロジェクトはフィリピン熱帯医学研究所に、狂犬病抗体検査ができるようになるための技術支援を行っています。

我々はまず、2019年4月にフィリピン熱帯医学研究所と共同で、フィリピン農業省畜産局/動物産業局の輸入許可を得て、国際獣疫事務局が推奨する国際機関からCVS-11株を輸入しました。
次に国際標準抗体検査法を行うためには、この輸入したCVS-11株をフィリピン熱帯医学研究所内の高度生物学的安全レベル検査室内で十分に増やして、検査用に保存していく必要がありました。

しかし当初、国際獣疫事務局が推奨する方法(BHK-21細胞を使用3))でフィリピン熱帯医学研究所が行ったところ、ウイルス増殖が出来ませんでした。

3)ハムスター腎由来細胞

2019年7月、プロジェクトリーダーである大分大学医学部微生物学講座の西園教授と同講座の山田准教授がフィリピン熱帯医学研究所に訪問し、ウイルス株増殖のための技術指導・技術移転を行いました。

大分大学医学部微生物学講座は、日本では唯一、医学部で狂犬病研究を行っている研究室で、狂犬病ウイルスが細胞で増殖するメカニズムや病気を起こすメカニズム、国際標準抗体検査を用いたワクチン効果の調査などの研究を研究室内の高度生物学的安全レベル検査室内で長年行っていて、狂犬病研究では世界でも指折りの経験と実績があります。

大分大学のこれまでの経験から、今回、微生物学講座から持参した狂犬病ウイルスが良く増えるNA-C1300細胞4)をBHK-21細胞の代わりに使用することを提案し、同時に狂犬病ウイルスを効率よく細胞に感染させる方法やその培養方法、さらにウイルスを回収する前に純分に増えていることを確認する方法などの技術指導・技術支援を行いました。その結果、輸入したCVS-11株を増やすことに成功し、狂犬病抗体検査用ウイルス株のフィリピン熱帯医学研究所への導入を完了することができました

4)マウス由来の神経系細胞

今後も引き続き技術指導を行い、狂犬病検査用ウイルス株CVS-11株の小分け保存を十分量準備して、国際標準抗体検査を実施する体制を整えていくつもりです。

本活動によって、フィリピン熱帯医学研究所の狂犬病検査室としての検査能力が向上すること、また、フィリピンにおける狂犬病対策に向けた取り組みが促進されることを切に願います。