nature.com natureasia.com naturejobs サイトライセンス ヘルプ
マイ アカウント ユーザ登録 各号の購入 購読/更新
Home
ハイライト
フィーチャー
目次
バックナンバー
Insight
出版誌について
購読/更新
価格表
ユーザ登録
関連書籍
naturejobs
求人・会議案内
法人購読情報
会社案内
投稿案内
広告掲載案内
Biotechnology
Cancer
Drug Discovery
Genetics
Immunology
Materials
Medicine
Microbiology
Molecular Cell Biology
Neuroscience
Physics
出版誌について



医学
SARSウイルスはネコやフェレットにも感染する

Nature 425(915), 2003

 SARS(重症急性呼吸器症候群)患者から単離したコロナウイルスの保有宿主はまだわかっていないが、野生動物の一種だったのではないかと疑われている。今回の研究によって、フェレット(Mustela furo)とイエネコ(Felis domesticus)はSARSコロナウイルス(SCV)に感染しやすく、一緒に飼育されている未感染動物へと実際に伝染することがわかった。遠縁にあるこれら2種類の動物でこれほど容易にSCVが伝染するということは、別の種にも潜んでいる可能性がある。

 血清学とウイルス学の研究によれば、中国イタチアナグマ(Melo-gale moschata)、ハクビシン(Paguma larvata)、タヌキ(Nyctereutes procyonoides)はSVCによく似たウイルスに感染することがわかっている。香港のアモイガーデンでは昨年100人以上がSARSに感染したが、このアパートの一角に住んでいるイエネコもSCVの感染が発見された。

 イエネコとフェレットのSVC感染のしやすさを調べるために、私たちは患者5688(SARSで死亡)から入手し、試験管内でベロ118で4回培養した106の接種量(TCID50)を気管内に接種した。そして感染後の別々の日に、これらの動物の鼻腔、咽頭、直腸からスワブを取った。各グループから4匹を感染後4日で殺し、標準のプロトコールにしたがって死体解剖を行った。

図1 SARSコロナウイルス(SCV)を接種したか、感染した動物にさらされていたフェレットとイエネコにおける、SCVの毎日の排出量

a,b, 呼吸器からSCVに感染させたネコ (a)とフェレット(b)(各6匹)の1mlあたりのSCVの滴定濃度。各グループから4匹の動物を感染後4日に殺し、感染後28日まで2匹は残した。

c,d, 感染させたネコおよびフェレットと一緒に飼っていた、感染させていないネコ(c)とフェレット(d)(各2匹)
逆転写酵素-遺伝子増幅法によってSCVの排出量を数量化し、滴定したSCV標準と比べた。NDは未決定を示す。

 SCVを接種したネコには臨床症状がなかったが、フェレットは6匹のうち3匹が感染後2〜4日で昏睡状態になり、このうち1匹が感染後4日に死亡した。逆転写酵素-遺伝子増幅法(RT-PCR)で調べると、すべてのネコ(図1a)とフェレット(図1b)でそれぞれ感染後2日から10日目、14日目まで引き続いて咽頭にSCVがみられた。感染後2〜8日に採取した咽頭のスワブと、感染後4日と6日にネコ2匹から採取した鼻腔のスワブから、ウイルスを単離した。フェレットの鼻腔または、ネコあるいはフェレットの直腸のスワブからは、SCVは見つからなかった。呼吸器への感染は実験した動物すべてにみられた。気道と肺からSCVを単離した(補足資料を参照)。

 肺のホモジェネートにおけるウイルスの滴定濃度を数量化すると、SCVに感染させたネコの肺(1×103±0.51TCID50ml−1)はフェレットの肺(1×106±0.70TCID50ml−1)と比べると、SCVの滴定濃度(幾何平均±標準誤差)は相対的に低かった。組織学的には、SCVに感染したマカクの病変と似たような肺の病変に、SCVは関連がある。ただし、SCVに感染したマカクの病変はより軽症で、とくにSCVに感染したネコは軽く、シンシチウムはみられなかった。

 胃腸と泌尿器では、RT-PCRによってSCVが確認された(補足資料を参照)。SCVに感染させた残りの動物(各グループ2匹)を追跡検査すると、感染後28日までにみなセロコンバートしていた(中和抗体の滴定濃度は40〜320)。授乳期のマウスの脳への接種で感染させようとしたが、これは失敗した。感染させたネコとフェレットと一緒に飼っていた、感染させていないネコ(図1c;n=2)とフェレット(図1d;n=2)は、SCVに感染した。ウイルスの滴定濃度は感染後2日から徐々に上昇し、感染後6〜8日でピークに達した。

 このネコは2匹とも感染による臨床症状が出ていなかったが、感染後28日までに両方ともセロコンバートしていた(この2匹のウイルスの中和抗体の滴定濃度は、それぞれ40と160だった)。フェレットは2匹とも昏睡状態で、結膜炎を起こしていた。これらは感染後16日と21日に死亡した。私たちは病理学的な実験を行い、ネコとフェレットにおける主な病変は脂肪肝と衰弱だったとわかった。1匹の動物の死後に肺の標本からSCVを単離したが、ネコもフェレットもSCVに関連した肺炎が死因だったという証拠はない。

 今回の結果から、フェレットとイエネコはSCVの実験的な感染を受けやすく、SCVは同じ場所に住んでいる動物へと実際に伝染することがわかった。したがって、これらの種は、SARSの抗ウイルス薬やワクチン候補をテストする実験動物として役に立つかもしれない。

Byron E. E. Martina(1), Bart L. Haagmans(1),Thijs Kuiken(1),
Ron A. M. Fouchier(1),Guus F. Rimmelzwaan(1), Geert van Amerongen(1),
J. S. Malik Peiris(2),Wilina Lim(2), Albert D. M. E. Osterhaus(1)


(1)Institute of Virology, Erasmus Medical Centre,3015 GE Rotterdam, The Netherlands
e-mail:mailto:a.osterhaus@erasmusmc.nl
(2)Department of Microbiology and Pathology,Queen Mary Hospital, SAR Hong Kong, China
(3)Government Virus Unit, Shek Kip Mei, Kowloon,SAR Hong Kong, China


参考文献
1. Ksiazek, T. G. et al. N.Engl.J.Med. 348,1953-1966 (2003).
2. Peiris, J. S. M. et al. Lancet 361, 1319-1325 (2003).
3. Guan, Y. et al. Science 302, 276-278 (2003).
4. Fouchier, R. A. M. et al. Nature 423, 240 (2003).
5. Kuiken, T. et al. Lancet 362, 263-270 (2003).

本稿の補足資料がネイチャーのウエブサイト内にあります。
この論文への金銭的な利害関係:なしとの報告



  nature について   購読する
| ホーム | 求人・会議案内 |  法人購読情報 | 会社案内 |  投稿案内 | 広告掲載案内 |
© 2003 Nature Japan K.K.
Privacy Policy