新型肺炎感染者6大陸に、中国の患者隠しに批判

【北京=竹腰雅彦】新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の
感染拡大が大きな国際問題になっている。世界保健機関(WHO)の
17日のまとめでは、27か国・地域で3389人が感染、165人が死亡。
感染者は6大陸に及び、感染経路や予防・治療策は依然未解明だ。

こうした中で、最初の患者を出した中国政府の「患者隠し」ぶりが
国際的批判を浴びており、WHOは同日までに「国際社会は中国の
情報を信用していない」と厳しく中国政府を批判した。18日には
「日本感染症学会総会」でSARS報告会が緊急開催され、日本国
内の対策も急務になっている。

SARSは、中国広東省で昨年11月中旬、最初の患者が見つかり、
その後、同省や香港を中心に世界に広がった。WHOのまとめでは、
感染者が中国本土で1457人(死者65人)、香港で1297人
(同65人)と、世界の確認感染者数の8割以上を占めている。
18日には香港で新たに4人が死亡し、感染者の増加に歯止めが
かからない状態だ。地域別でも過去1週間で福建省、内モンゴル自治区、
寧夏回族自治区など国内各地で感染者の存在が判明し、
感染が全土に拡大している。

アジアではシンガポール(死者15人)、ベトナム(同5人)、
タイ(同2人)などで被害が出たほか、北米、インド、豪州にも感染は
飛び火している。このほか地理的に離れた南米ブラジル、南アフリカ、
中東のクウェート、ドイツやフランスなど大陸欧州、さらに島国の英国や
アイルランドでも感染者が出ており、新型肺炎の猛威は今や6大陸に及んでいる。

特に経済全般への影響が懸念される東南アジア諸国連合(ASEAN)は、
今月29日にこの問題で緊急首脳会議を招集する。

こうした世界への感染拡大に対し、中国政府の対応への批判は高まる一方だ。

WHOのSARS調査チームは16日記者会見を開き、中国政府の統計が
全くあてにならないとした上、「国際社会は全く中国の統計を信用していない、
と政府には伝えてある。今こそ信頼構築作業を始めなければならない」と
厳しい言葉で、中国政府を批判した。

中国政府は、経済成長に悪影響が出たり、社会不安が増大するのを恐れて、
「情報統制を行っている」と見られている。だが情報隠しは、実態把握を
大幅にゆがめるだけでなく、各国医療当局の協調や感染防止対策にも
影響を与えている。中国当局は「発表した数字が実態だ」(外務省報道官)
などと過小報告を否定したが、WHOは「北京市内の感染者数は、
(当局発表の最大5倍に当たる)100―200人」と、中国政府に反論、
今や中国政府の国際的信用問題に発展している。

国内の感染症専門医らが福岡市に集まった「日本感染症学会総会」では18日、
新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の報告会が緊急開催された。

定員1900人の会場をほぼ埋めた専門医たちに対し国立感染症研究所の
岡部信彦・感染症情報センター長は、世界の感染拡大の状況について、
]「1、2月に第1の波、3、4月に第2波があり、今はおさまりつつあるが、
次の波が出てくる可能性もある」と警告した。

(2003/4/18/23:13 読売新聞WEB版)