新型肺炎が中国経済に激震、操業中止や航空便減少

新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の中国経済への影響が
広がっている。海外からの旅行客の激減で航空会社が減便に踏み切った
ほか、生産ラインを停止する企業も出た。SARSの被害が拡大すれば、
中国の高度成長の腰を折る懸念も強まってきそうだ。

松下電器産業の現地法人「北京・松下電子部品有限公司」では、
従業員の家族が感染者に接触した疑いがあったため、この従業員が
働いていた製造ラインを21日に止めた。その後、従業員が、
感染者の疑いがある家族と接触した後、出勤していないことが
分かったため、22日には操業した。ただ、こうした騒動が、
各生産現場で起きる恐れがあり、「世界の工場」と呼ばれる
中国経済が、機能マヒに陥る危険性が出ている。

一方、松下、東芝などの日本企業の大半は、北京市、広東省などへの
出張を禁止している。中国東方航空は、旅客が激減した中国本土からの
香港便と、日本便を30%減便すると発表した。

また、日本経団連と日本商工会議所が22日、それぞれ予定して
いた訪中団の中止を決めるなど、日本からの経済ミッションも
ほぼ全面的にストップしている。日本経団連は5月12―17日に
北京、重慶へ、日商は6月1―6日に北京、上海などを訪問する
ことにしていた。北京市で開催する予定だった国際会議や見本市も
軒並み延期か中止になり、レストラン、ホテルなどは打撃を受けている。

中国最大の輸出見本市である広州交易会は、SARS感染者が
中国で最も多い広東省の広州市で開催されているが、海外からの
買い付け業者が激減、15日から20日までの契約高は、約33億ドル
と昨年秋の交易会全体の2割弱という低水準だ。広州交易会は、
中国の輸出全体の1割程度の契約を上げているため、中国の輸出全体に
影響が出る懸念が強い。広東省は、すでに今年の経済成長予測を13%から、
11%前後に下方修正した。中国の経済成長に与える影響は現時点では
不透明だが、「1―3月に達成した9・9%成長から、大きく落ち込む
のは確実」(日系金融筋)との見方が多い。(北京・東 一真)

(2003/4/23/02:08 読売新聞WEB版)