SARS感染地域指定、深刻さで3〜4段階に WHO

新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界的な感染拡大を
受け、世界保健機関(WHO)は、感染地域か否かの区別しかない現
在の指定基準を見直し、事態の深刻さに合わせて3〜4段階に分ける
新基準を導入する。各国から「感染者の多い国も少ない国も同列に扱
われている」と不満が出ていたためで、近く公式に発表される。

26日にクアラルンプールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEA
N)プラス日中韓の保健担当相会議に出席した尾身茂・WHO西太平
洋地域事務局長が朝日新聞に明らかにした。

「伝播(でんぱ)確認地域」という名称のWHOの感染地域リストへ
の指定は、人から人への感染が起きたかどうかだけを基準としている。
現在、SARSについてはトロント(カナダ)、北京、香港、台湾、
ハノイ(ベトナム)、シンガポールなど11カ所がリストアップされている。

これだと感染者が2000人を超える中国と数十人程度の国が同列に
扱われる印象を与えるほか、一件でも感染が見つかればリストに入れ
られ、その途端に国や地域の観光、経済が大きな打撃を受けかねない。
WHOは感染が深刻な地域には渡航自粛勧告も出してきたが、リスト
との関連が分かりにくい面があった。

尾身氏によると、SARSを含む各感染症の地域を指定する新基準で
は、患者の多寡や感染の形態、海外への感染の有無、ウイルスの特定
状況などの要素をWHOが総合的に判断し、「重度」「通常」「軽度」
(名称は検討中)といった3〜4の段階に分けた形で、地域を指定する。

また、その国の医療監視態勢の健全さも加味する方針で、今回の中国
のように、情報隠しなど政府の対応に問題があれば、感染者が少なく
ても「重度」に指定することがあり得るという。

指定方式の見直しについては保健相会議でも共同声明に各国の要望とし
て盛り込まれていた。またトロントに今月渡航自粛勧告を出されたカナ
ダのように、WHOの感染地域の扱いに不満を訴えるケースも出ていた。

(2003/4/28/05:47 朝日新聞WEB版)