文化庁、北京開催予定の「日本名宝展」急きょ中止

中国などでの新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の流行を受
けて、文化庁は、北京市で5月1日から開催予定だった「日本名宝展」
を急きょ中止した。開幕目前で、既に展示品や担当者は北京入りし、準
備に入っていたが、結局、日本の国宝などは、中国の市民の目に触れる
ことなく“帰国”する。文化庁美術学芸課によると、開催経費の
4700万円は、ほぼ無駄になりそうだ。大相撲の韓国公演が延期にな
るなど、アジアで猛威をふるうSARSに、文化交流にも影響が出始めた。

日本名宝展は、北京市にある中国国家博物館で6月15日まで開催予定
だった。今月14、15の両日、埴輪武装男子立像(東京国立博物館蔵)
など国宝6点を含む99点を中国に運んだ。

ところが、その後、中国政府が突然、感染者数を大幅に上方修正し、
日本の外務省が事実上の渡航延期勧告を出したため、文化庁は23日
に中国側にファクスで中止を申し出た。開催しても集客が見込めず、
SARS感染拡大防止のための措置で、中国側も中止に同意した。

名宝展は、来年度にも改めて開催する予定だが、美術学芸課は「1年半
前から準備していたのに残念。もっと早く現地の実情がわかっていれば」
と肩を落としている。

一方、外務省所管の国際交流基金でも、北京大学へ講師5人を派遣する
計画を中止し、7月に予定されている北京、上海での映画上映会を延期
した。アジア各国からの高校生研修プログラムは、日本側のホームステ
イ受け入れ家庭からSARS感染に対する不安の声が上がったため、こ
れについても延期を決めた。国際交流基金によると、既に5つの交流事
業が中止か延期となり、今後も増える見込みという。

(2003/4/28/20:08 読売新聞WEB版)