“急造病院"建設、「SARS恐怖症」の新語も…北京

【北京=竹腰雅彦】新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の拡大が
止まらない北京市では、感染者らを隔離収容する施設の不足が深刻化し、急
ごしらえの病棟建設が進んでいる。市民の間では、感染者との接触を理由に
強制隔離されることを警戒する動きも広がりを見せている。

北京市北部の昌平区小湯山地区では、同市の大規模感染の実態が明らかにされ
た20日以降、プレハブやレンガを使った“急造病院”の建設が急きょ始まり、
500室1000床を超えるSARS専門病棟の突貫工事が進められている。

28日、病棟の建設現場を訪れると、約4000人の作業員らが、2交代24
時間体制で、作業に取り組んでいた。「非典(非典型肺炎=SARS)との戦
争で、勝利に貢献を――」。横断幕の下で、黙々と作業を進める作業員の傍ら
では、疲労困ぱいの末に地べたでそのまま眠り込む者の姿も目立った。

北京市内で、すでに封鎖・遮断されたSARS専門治療病院やSARS病棟は、
合計約130か所。また、感染者らに「密接に接触した」として隔離された
市民は、28日までに前日比1300人増の約9000人にのぼっている。

19人の感染者が出たため、24日から封鎖されている北京大学人民病院。
ここには、患者のほか、約1000人の医師や看護師も隔離されている。

病院前の路上には、市民が「健康をお祈りします」などと書いた紙が何枚も
掲げられている。だが、当局が正門前に置いた差し入れの食料を運び込むた
めに現れた医療関係者の表情には、疲労の色もうかがえた。

北京の一般市民たちは、「巻き添え」で強制隔離されることを極度に警戒。
市内で隔離・封鎖対象となった場所などの情報を、互いに携帯電話のメール
でやりとりする動きが拡大している。1日何十回も手洗い、うがいをしない
と気が済まない人などを指す「SARS恐怖症」との新語も誕生した。北京
市当局が新たに開設したSARS心理相談には、1日500本以上の電話が
寄せられている。

(2003/4/29/23:01 読売新聞)