新型肺炎制圧へ「特別基金」

【バンコク=奥村健一】新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
対策を協議する東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の特別首脳会議が
29日、バンコクで開かれた。SARS関連の首脳会議開催は初めて。

会議では、SARS制圧に向けたASEAN―中国の協調を確認する共同声明
を採択し、中国などの拠出によるSARS対策特別基金設立や、SARSの制
御と治療法に関する国際シンポジウムを5月に中国で開催することなどを決めた。

この日の会議は、ASEAN10か国による首脳会議、引き続きASEANに
中国を加えた首脳会議の2部構成で行われ、それぞれが共同声明を採択した。

ASEANと中国の共同声明は「SARSが、アジアと全世界の人々の生命
と健康だけでなく、経済や社会発展にも多大な脅威になっている」「グロー
バル化の状況下で、非伝統的な脅威がいかに危険であるかを示した」と指摘。
その上で、SARSを根絶するための国際協力を強化する必要性をうたった。

具体的対策の柱となる特別基金については、中国が1000万元(約1億
5000万円)を拠出することが声明に明記された。このほか、タイ高官は、
同国が1000万バーツ(約3000万円)を拠出する用意があると表明し
ている。他国も自発的に拠出する方向とみられる。

共同声明はさらに、〈1〉情報交換のネットワーク構築〈2〉SARSの感
染パターンや治療法などの共同研究の実施〈3〉出入国管理政策を調整する
ための当局者間会合の早期開催――なども盛り込んだ。

また、首脳会議では、情報交換ホットラインの設置など、26日にクアラルンプ
ールで開かれたASEANと日中韓の保健担当相会合での決定事項を再確認した。

今回の首脳会議は、中国を含む地域全体が首脳レベルでSARSに対処すると
の強い政治的メッセージを内外に発信することが最大の狙いだった。

一方、中国の温家宝首相にとって、今回の会議出席は、3月の首相就任以来、
初の外遊となった。会議に同席した世界保健機関(WHO)のヘイマン感染症
対策部長は、「中国が、出国者に対する検診を導入することが重要」と指摘、
被害の拡大が続く中国に対し、一層の対策強化を求めた。

(2003/4/30/00:14 読売新聞WEB版)