新型肺炎の渡航自粛勧告、トロントは解除…WHO

【ジュネーブ=大内佐紀】世界保健機関(WHO)のブルントラント
事務局長は29日夜(日本時間30日未明)、ジュネーブ市内のWHO本
部で記者会見し、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染拡
大防止を目的としたカナダのオンタリオ州トロントへの渡航自粛勧告(渡
航延期勧告)を30日から解除すると発表した。

WHOは今月23日にトロントに関する勧告を出したが、この時点では最
低3週間は維持するとの方針を示していた。ブルントラント氏は、1週間
で勧告を解除する理由として、トロントでSARS拡大が食い止められつ
つあることや、カナダ政府が、空港での検疫体制を入国する乗客のみなら
ず出国する乗客にも広げる方針を打ち出したことなどを挙げた。

カナダ政府は、同国にとって第1の商業都市であるトロントに出されたW
HOの勧告に反発し、今月24日にはクレティエン首相が、25日にはマ
クレラン保健相がブルントラント氏に電話をかけ、勧告の再考を促していた。
29日も、勧告解除に先立ちオンタリオ州政府のトニー・クレメント保健
相がジュネーブを訪れブルントラント氏と会談、同州政府としてのSAR
S対策強化法や感染が抑えられている現状について説明したばかりだった。

一方、ブルントラント氏は4月2日に出した中国・広東省と香港、同23
日にトロントと合わせて出した中国・山西省と北京への渡航自粛勧告につ
いては当面、解除する見通しが立たないと述べた。

(2003/4/30/12:03 読売新聞WEB版)