新型肺炎:キムチで撃退? 中国の輸入量6倍に

中国でいま、キムチが売れに売れている。それもこの春になって
からの現象で、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)
の予防食品ということらしい。肺炎にキムチが効く――ホントな
のだろうか。

◆学者も興味

「中国人の学者仲間の最大の関心はSARS。そして、彼らが最
も興味を示していたのがキムチのことでした」と話すのは、多く
のキムチ関連著書のある滋賀県立大の鄭大聲(チョンデソン)教
授(発酵食品専攻)。

鄭教授は4月下旬、ソウルで開かれた韓国食生活文化学会に出席
した。集まった日中韓の学者の雑談の中で、中国全体でキムチの
消費が増えていることが話題になったという。もともと中国では、
] 朝鮮半島に近い吉林など東北3省でキムチは食べられているが、
ほかの地域ではあまり流通していない。「全土で、というのは意
外でしたね」(鄭教授)

北京や上海の店では、輸入キムチの売り上げが急増している。ま
た、中国産キムチには、出荷量が倍増した銘柄もある。

韓国農水産物流通公社東京農業貿易館(東京都新宿区)によると、
韓国から中国に輸出されたキムチは今年1〜3月の合計が前年同
期比で約6倍の10トンに伸び、4月も同じ傾向という。

◆乳酸菌がカギ?

キムチ人気の呼び水となったのは「ヤクルト説」が有力だ。ヤク
ルト(同港区)広報室によると、同社が01年に発表した「イン
フルエンザウイルスの感染予防効果がある」という論文がネット
上でうわさとして広まった。そこで、香港の医師会が「SARS
への効果は分からないが、抵抗力は高まるだろう」と指摘して火
がついたという。

香港の現地法人のヤクルト販売本数は、通常1日平均30万〜4
0万本なのに、3月31日には香港で69年に営業開始以来、最
高の90万本を記録。4月も前年同月比で25%増だ。「同じ乳
酸菌の発酵食品で、その上、免疫力を高めるとされるニンニクな
ども含むことから、キムチがSARS予防食品として注目された」
(業界関係者)

◆日本もブームに?

SARSの特効薬はまだ見つかっていない。ならば、かからない
ためには自分の体の免疫力を高めたいと、皆が考えたのか。

製薬メーカー「ツムラ」は4月28日、生薬の輸入などで中国に
関係が深いことから、在日本中国大使館(東京都港区)に漢方薬
を無償提供した。「免疫を高め、日ごろの体調管理をして感染し
ない状態にするのが大切。一般の人からの問い合わせも増えてい
ます」(広報室)

「今回、ソウルにあるキムチの博物館に行った時、館長が『キム
チを食べている韓国の人はそう簡単にはSARSにはかからない
よ』と話していた」。鄭教授は振り返る。日本はどうだろうか。
「日本に上陸すれば、中国と同じようにキムチ消費が増えるかも。
なんといっても、キムチは“食べる薬”といえる健康食品なんで
すから」 【遠藤和行】

[毎日新聞5月6日] ( 2003-05-06-13:10 )