新型肺炎苦のキャセイ航空、配当金半減へ

新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響でアジアの
航空客が激減している中、香港のキャセイ航空は、運転資金をね
ん出するため2002年12月期の配当金を半減する方針を決め
た。シンガポール航空もコスト削減策として客室乗務員に無給休
暇を義務づけており、世界の航空業界の中でも収益性が高いアジ
アの“両翼”が、苦戦を強いられている。

キャセイ航空は、5日の取締役会で、1株あたりの配当金を3月
に発表した56香港セント(約8・7円)から28香港セント
(約4・3円)に半減することを、株主総会に提案する方針を決
めた。業績確定後に1度決めた配当金額を変更するのは異例だが、
「乗客数が前年比4分の1に減少し、予約の減少もどれだけ続く
かわからない」(同社)という緊急事態を乗り切るには、やむを
得ないと判断した。

今回の措置でキャセイは9億3500万香港ドル(約145億
9600万円)を節約でき、内部留保に充てられる。

しかしキャセイは、通常運航本数の45%にのぼる現在の減便規
模を、少なくとも6月までは続ける方針だ。乗客減や減便による
1日あたりの損失は約300万米ドル(約3億6000万円)に
達するとの指摘もあり、この状態が続けば今回の節約分も40日
前後で使い切ってしまう計算になる。

一方、シンガポール航空も、減便などの影響で1日最低100万
シンガポール・ドル(約6800万円)の損失が生じているとの
見方がある。同社はコスト削減策として、5月から来年3月まで、
客室乗務員約6600人に対して、2か月ごとに1週間の無給休
暇を取らせる制度を始めた。

キャセイ、シンガポールとも、SARSの影響が長期化すれば、
さらなる対応策を迫られるのは必至。アジア有数の人と物の流通
拠点を足場に、高収益を実現してきた両社だが、思わぬ壁に突き
当たった形だ。(香港 深沢 淳一)

(2003/5/7/01:02 読売新聞WEB版)