北京の感染源特定72歳男性機内で広げる

【香港11日共同=木本一彰】北京で猛威をふるう新型肺炎
(SARS)の感染源の一人は、三月に香港を訪れた七十二歳
の申国人男性(死亡)だったことが分かった。内モンゴル自治
区の感染や、中国で外国人初の死亡例となった国際労働機関
(ILO)局長への感染も、航空機内でこの男性から広がった
可能性が高い。

十一日付の中国系香港紙、文匪報が、北京疾病予防対策
センターの専門家の話として報じた。

世界保健機関(WHO)は、中国での感染経路が不透明だと指摘し
ているが、感染源の一端とその経路が明らかになったのは初めて。

新型肺炎では、、シンガポールの女性や広東省広州市の大学教
授など、強力な感染力を持って周囲に感染を広げるスーパー・
スプレッダーの存在が報告されている。

この男性は三月初旬、香港のプリンスオブ・ウェールズ病院に
入院していた新型肺炎の親せきを見舞い、感染。三月十五日、
中国国際航空機で北京に戻る際、内モンゴル自治区出身の客室
乗務員二人、台湾出身者三人、公務員二人、シンガポールの女
性一人、香港の旅客九人の計十七人に感染が拡大した。

乗務員二人は、内モンゴルでの約二百九十人の感染源となった。
公務員はバンコクでの会議に出席、三月二十三日、タイ航空機
で北京に戻る際、同乗していたILOのべッカ・アロー技能開
発局長が感染、四月六日に死亡した。感染源の男性自身は、北
京大学付属病院で治療を受けた後、北京市内の漢方療法の病院
に転院し、同病院職員に感染を拡大、三月二十日に死亡した。
ここでで同病院の職員と配偶者が感染、死亡したほか、その他
の感染者は市内の病院に入院し、漢方病院は診察を停止した。

☆スーパー・スプレッダー☆

感染後、通常の患者よりも強力な勢いで周囲に感染を広げる患
者。新型肺炎の感染拡大に重要な役割を果たしているとみられ
るが、詳しいメカニズムは不明。米疾病対策センターは9日、
シンガポールでの新型肺炎の多くは5人のスーパー・スプレッ
ダーが広げたとの調査結果を公表。5人は感染力が極めて強く、
1人で周囲の15−40人に次々感染を広げたという。>

(2003/5/12/00:00 大分合同新聞朝刊)