新型肺炎国内発生時、渡航先など公表…政府方針

政府は14日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
の患者が国内で発生した場合の対処方針を固めた。

患者が確認され次第、患者を強制的に入院させて感染拡大を防
ぐほか、患者が入院している自治体名、渡航地域・期間など感
染経路に関する情報を速やかに公表し、パニックやデマによる
混乱を未然に防止したいとしている。

政府の対処方針によると、都道府県などからの通報で、SAR
S流行地域から帰国後10日以内に38度以上の発熱やせき込
みなどの症状があり、レントゲン検査で肺炎の症状が出た「可
能性例」があった場合、厚生労働省が、入院先自治体や渡航先
などを公表する。

さらに、厚生科学審議会感染症分科会がSARS患者と認定し
た時点で、坂口厚生労働相がただちに記者会見し、患者発生の
事実を公表する。小泉首相を本部長に関係閣僚や内閣危機管理
監らをメンバーとする政府対策本部も発足する。

患者情報については、名前、住所、勤務先などはプライバシー
保護のため公表を控えるものの、〈1〉患者が入院している病
院のある都道府県や政令指定都市など自治体名〈2〉国籍〈3〉
年齢〈4〉渡航地域とその期間〈5〉病状――を公表する。渡
航地域・期間を公表するのは、パニックやデマなどによる不測
の事態が発生することを防ぐ狙いからで、利用した旅客機の便
名も公表する方向で調整している。

ただ、入院先などの公表によって逆に地域住民の不安をあおる
事態も予想されるため、具体的な公表内容は個々のケースを見
ながら最終判断する方針だ。

一方、患者本人への措置は、現行の感染症法を適用し、入院勧
告を行ったうえ、公費負担で強制的に入院させ、住居や持ち物
の消毒などを実施する。家族や職場の同僚らに対しても、公費
負担で健康診断を行い、SARSの感染が認められた場合は入
院を勧告、感染していない場合も、保健所による経過観察措置
を取る。

患者の入院先などには、疫学や臨床医学の専門家チームを派遣、
専門的な指導や助言を行う考えだ。

世界保健機関(WHO)によると、14日現在、世界のSAR
S患者(感染した可能性がある者も含む)は7548人で、う
ち死者は573人。国内では同日までに、「疑い例」が46人、
「可能性例」が16人報告されているが、強制入院には至って
いない。

(2003/5/15/03:02 読売新聞WEB版)