新型肺炎ウイルス故意に散布すれば死刑…中国

【北京=佐伯聡士】新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
の感染拡大が懸念されている中国で、最高人民法院(最高裁)と
最高人民検察院(最高検)は、ウイルスを故意に散布して人身に
危害を与え、公共の安全を脅かした者に対し、最高で死刑を適用
するとの司法解釈を公布し、15日から施行した。

胡錦濤政権は厳罰の適用により、SARSをめぐる社会不安の拡
大を抑制する狙いだ。

新華社電によると、刑法の新解釈では、SARS患者などが故意
にウイルスを散布して他人に感染させて死亡させたり、重症に陥
らせたりして、公共と私有の財産に重大な損害を与えた場合、
10年以上の懲役刑から、無期懲役、死刑までが適用可能となる。

また、失業などを恐れて強制隔離を逃れようとする感染者が少な
くないことから、感染者や感染の疑いのある者が検診や治療、強
制隔離を拒否した場合には、3年以上7年以下の懲役刑を適用す
るとしている。

さらに、新解釈は、デマを流して社会秩序を乱す者に対しても、
国家転覆・分裂煽動罪(5年以上の懲役刑)も適用できると定め
た。出稼ぎ労働者の北京からの帰郷ラッシュが起きたのは、「北
京が封鎖される」とのデマが主な原因だったと見られているからだ。

胡政権は、厳罰を適用して社会不安の芽を「厳打」(厳しく取り
締まる)する構えだが、当局の情報公開に対する民衆の根強い不
信感がデマを助長しているだけに、撲滅につながるかどうかは不
透明な情勢だ。

(2003/5/16/20:36 読売新聞WEB版)