新型肺炎感染医師なぜ来日?台湾の防疫態勢の甘さ指摘

日本に滞在中に新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
を発症した台湾人医師は、勤務先の台北市の病院でSARS患
者と接触する機会もあり、感染リスクが高い人物だった。なぜ
日本に入国することができたのか。台湾の衛生担当者は「SA
RS患者の治療機会のある医師には、自宅待機を勧告している」
と弁明するが、日本の感染症対策専門家らは、台湾当局の防疫態
勢の甘さを指摘すると同時に、この医師のモラルを批判している。

世界保健機関(WHO)は感染者の拡大を防止するため、感染
の可能性がある人と10日以内に接触した人には、「海外への
渡航禁止」を勧告している。日本と台湾の渡航手続きを代行す
る財団法人交流協会によると、台湾でもこの勧告に沿って、患
者と接触する医療関係者や家族などは「A級」と指定。患者と
の接触後は10日間は、外出禁止措置を取っている。しかし、
実際に医師が簡単に日本に入国できたことで、「1番厳密に取
り扱うべき人物が漏れ、チェックが甘かった」(交流協会総務
部)と話す。

感染症被害を最小限に食い止めるには、感染者を国内にとどめ
ることがかぎ。ウイルス感染に詳しい山内一也・東大名誉教授
は「1か国・地域でも対策の足並みがそろわなければ、SAR
Sのような新たな感染症の被害拡大は防げない」と強調する。

(2003/5/17/23:04 読売新聞WEB版)