謎の肺炎、感染ルート追跡で「キーマン」の患者浮上

アジアを中心に最近1週間で150人以上の患者が報告されて
いるナゾの肺炎「SARS」(重症急性呼吸器症候群)が、世
界を震撼させている。原因究明のため、現地入りしたWHO
(世界保健機関)関係者などが感染経路を必死に追う中、1人
の中国系米国人男性が、「点と線」を結ぶキーマンとして浮か
び上がっている。

WHOの発表などによると、正体不明の感染症の不気味な前兆
は、先月半ばに報告されていた。中国広東省で300人以上の
肺炎患者が発生、5人が死亡していたのだ。中国政府は詳細を
公表せず、SARSと断定できないが、世界の公衆衛生関係者
の注目を集めた。

騒ぎが本格化したのは、今月12日ごろ。新たに香港とベトナ
ム・ハノイの病院で、肺炎が集団発生。患者の9割は健康な病
院職員で、病原体も特定できず、現地はパニックになった。

調査が進むと、無関係に見えた2か所の流行を結ぶ、中国系の
米国人ビジネスマンが浮上してきた。上海、香港を経てベトナ
ムに入国したこの米国人は先月26日、ハノイで高熱を出して
入院。香港に転院したが今月13日に死亡した。

ハノイの病院では、米国人の治療に当たった病院職員7人が発
病。1人が死亡したが、40人余の患者全員に、ハノイの病院
との接点があった。一方香港でも、12日ごろから100人以
上の患者が出たが、やはり米国人の転院先との接点があった。
タイの患者1人も、旅行で訪問中のハノイの病院職員だった。

感染経路の調査で問題となっているのは、シンガポールとカナ
ダの患者だ。キーマンとみられる米国人との接点が見つからず、
全く別の感染経路が存在する可能性があるからだ。

シンガポールでは、同17日までに、香港から帰国した3人ら
計21人が患者となった。7人の患者が確認されたカナダでは、
2人が死亡。家族に香港帰りの人がいたとされる。

カナダやシンガポールの患者は、発病前に米国に一時滞在して
いた。このため米疾病対策センター(CDC)では、米国内の
感染例はないか――血眼になって調査を進めている。

(2003/3/18/03:04 読売新聞WEB版)