台湾、渡航管理強化で感染者流出防止に着手

【台北=若山樹一郎】新型肺炎に感染した台湾人医師(26)
が日本で観光旅行をしていた問題を受けて、台湾の衛生当局
は感染者や隔離者の出入境管理を厳格に行うことを決めるな
ど、感染者出境対策にようやく本格着手した。

衛生当局が20日までに実施を決めた具体的措置によると、
今後、台湾内に約1万2000人いる自宅隔離者の名簿を一
元的に管理、データベース化を急ぐ。その上で、出入境管理
機関との連携を強化して、「出境すべきでない人は出さない
ようにする」としている。

台湾当局では香港などでの感染拡大を受け、4月10日から
外からの入境者に対する空港での体温検査を義務づけた。同
28日には、香港や中国大陸からの来訪者に対し、国籍を問
わず10日間隔離するなど、周辺諸国に比べ厳しい水際対策
を導入した。一方、出境者に対して体温検査が義務付けられ
たのは同23日。台湾では感染者流入対策に重点が置かれ、
感染が急拡大した4月下旬以降も、新たな感染者出境防止策
は取られていなかった。

台湾内には今回の台湾人医師の日本訪問を批判する声はほと
んど出ておらず、危機意識の薄さを指摘する声もある。

日本ではこの医師のモラルを問う声が強いが、台湾では「医
師は直接、新型肺炎患者に接していないうえ、日本出発前の
健康状態もよく、問題はなかった」(医師の勤務先の馬偕記
念病院の蔡正河副院長)との見方が大勢だ。この医師は、大
部屋の治療室で新型肺炎患者と数時間過ごしているが、台湾
では「リスクの高い人」には見なされてはいなかった。

(2003/05/20/22:17 読売新聞WEB版)