新型肺炎制圧、最短で2―3か月…WHO局長が見通し

【ジュネーブ=大内佐紀】世界保健機関(WHO)で中国、
ベトナムなど、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
の感染拡大が著しい地域を統括する尾身茂・西太平洋地域事
務局長は21日夜、ジュネーブ訪問中に読売新聞と会見し、
SARSの制圧には今後少なくとも2―3か月かかるとの見
通しを示した。

尾身氏は、中国の呉儀・副首相兼衛生相がWHO年次総会の
場で、中国での感染がピークを越えたと発言したことについ
て「WHOの認識とは異なる。中国でのSARS制圧には今
後、2―3か月は必要だ」と述べた。SARSの発生源と見
られる中国・広東省の場合、WHOの認識ではピーク時(今
年2月)から「下火になりつつある」現時点まで3か月を要
しており、中国でまだ感染のピークを越えていない地域があ
ることを考慮すると、制圧には少なくとも同程度の時間が必
要になるとの認識だ。

WHOは、これまでに「感染地域」に指定した地域のうち、
ベトナム、モンゴル、カナダ、フィリピンを指定から外し、
SARSの「制圧」を宣言している。近日中にシンガポール
でも「制圧」が宣言されるとの予測があるほか、WHOは香
港でも感染のピークは越えたとの認識だ。これにより、感染
のピークをまだ越えていない地域は中国本土各地と台湾とい
うことになる。

SARS感染が中国で深刻化したことについて尾身氏は「政
府のコミットメント(関与)による。感染者を早期発見、隔
離するシステムがきちんとしているほど感染拡大を抑えられ
る」とした。隔離システムの強化が、人権侵害につながると
の懸念に対しては「飛行機で感染が広がるなどSARSは2
1世紀的な感染症といえるが、これまでのところ、効果的な
対処法は人の隔離、行動の制限という19世紀的な手法。感
染の恐れのある人の協力をあおぐことは不可欠」と語った。

(2003/05/22/23:01 読売新聞WEB版)