カナダ・トロント周辺で新型肺炎死者、新たに3人

【ワシントン=笹沢教一】カナダ・オンタリオ州の保健当
局者は25日、トロント周辺で新型肺炎(重症急性呼吸器
症候群=SARS)の新たな感染の「可能性例」8人を確
認し、累計死亡者が3人増えて27人になったことを明ら
かにした。

ロイター通信などによると、同国の保健当局は、800人
以上に自宅待機などの隔離措置を取った。

アジア以外で唯一SARS感染が深刻化したカナダでは先
月19日以来、新たな感染者は出ておらず、世界保健機関
(WHO)は今月14日、トロントに対する感染地域指定
を解除したばかり。世界でのSARSの死亡者は700人
を超えており、1度安全宣言が出された地域での再流行は、
世界各国の保健当局者への警鐘となりそうだ。

これまでのロイター通信や地元メディアの報道によると、
新たな「可能性例」8人のうち2人がすでに死亡、別の1
人も25日に死亡した。2人の可能性例はいずれも高齢者
で、AFP通信は、25日に死亡した男性も60歳を超え
ていたと伝えている。保健当局は、より感染の可能性が低
い「疑い例」26人についても検査を進めている。

トロントに対してWHOは先月23日、渡航自粛勧告を出
したが、カナダの保健当局が徹底的な隔離(封じ込め)作
戦を進めた結果、先月29日には勧告解除を発表した。日
本政府もこれに追随し、今月1日に渡航情報の危険度を引
き下げていた。トロントの封じ込め作戦については、米疾
病対策センター(CDC)が現在の最も有効な方法として
強く支持、23日付の米科学誌「サイエンス」でも、米加、
英・香港の2つの研究チームが「隔離と早期治療を行えば、
SARSを抑え込むことができる」とする研究発表を行っ
ていた。今回の新たな感染者によって、こうしたシナリオ
も見直しを迫られそうだ。

現時点では、SARSの特効薬もワクチンも開発できてい
ない。この状況が続けば、今冬の風邪流行シーズンにはさ
らに深刻化する可能性があると指摘する専門家もいる。

(2003/5/26/12:51 読売新聞WEB版)




25日、トロントの病院の入り口で、
新型肺炎の感染拡大を防ぐため、
「マスク着用前の手の消毒」を
徹底する病院職員(ロイター)