中国・天津の新型肺炎、1人から160人が感染

【北京=浜本良一】中国・天津市で広まった新型肺炎(重
症急性呼吸器症候群=SARS)は、他の人への感染力が
極めて強い「スーパー・スプレッダー(中国語で毒王)」
の患者1人が160人に感染させていたことが分かった。

北京の隔週刊誌「財経」によると、この患者は河北省の男
性公務員(54)。4月上旬に心臓病などの治療のため北
京市内の病院に入院したが、天津市内の武装警察医学院付
属病院に名医がいることを知り、4月15日に転院した。

この男性はその翌日から発熱などSARS特有の症状が現
れたため、SARS専門の天津肺科病院に移された。同時
に、この男性と接触した武装警察病院の医師・看護師10
人と、病室で一緒だった患者2人とその家族も隔離された。

ところが、天津肺科病院はSARSと断定できず、前後4
回にわたり「彼はSARS患者でない」と電話で伝えたた
め、武装警察病院は隔離を解除した。その間に男性の症状
はさらに悪化。同市内の伝染病病院に再び転院した後、S
ARSの疑いありと診断され、同20日に死亡した。

この間、男性が入院した天津市内の3か所の病院では計6
0人の医師と看護師らがSARSに感染。入院患者や医師
の家族への2次感染も起き、最終的に感染者は160人に
達したという。この件で武装警察病院と天津肺科病院の両
院長が更迭された。

同誌によると、スーパー・スプレッダーの例としては、3
月中旬に北京市内で発症した70代の男性が、香港から戻
る際に搭乗した中国国際航空機の乗客112人のうち16
人に感染させたケースがある。

(2003/05/26/20:15 読売新聞WEB版)