新型肺炎被害の中国に、日本メーカーが続々義援金

2003/06/07/22:14読売新聞WEB版

 新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)被害が浸透する中国に、義援金を贈る日本メーカーが相次いでいる。患者の見舞金としての性格を持つが、この機会に、現地生産化を進める上で中国当局との関係を深めたい日本企業の“本音”も見え隠れする。

 このうち、日産自動車は、総額約2250万円を中国衛生省と北京市に寄付する。今月から中国の大手自動車メーカー、東風汽車と合弁で、小型乗用車「陽光(サニー)」の現地生産を始めることもあって、「見舞いの気持ちを表すとともに、当局との良好な関係の維持にもつながる」と判断した。

 ソニーは、現地法人が北京市の病院に約750万円を寄付、本社からも3000万円を駐日中国大使を通じて中国政府に贈った。ともに現金のプレゼントで「中国はビジネス上、重要な地域。物品よりも現金の方が活用しやすい」と説明、使途は指定していない。

 昨年10月に現地生産を始めたトヨタ自動車は、中国政府と、工場がある天津市に計約3000万円を寄付したほか、資生堂も化粧品工場がある北京市に1750万円を寄付している。

 中国では、生産する品目や規模などを決める際、中央政府と地方政府の認可が必要だが、「担当者が交代すると交渉が中断することも多い」(大手自動車幹部)と言い、先進国に比べ、生産活動が展開しにくい面がある。こうした状況の中、義援金には、当局との友好関係を維持することで、急成長を続ける中国市場で「ライバルに先んじたい」という思いも込められているようだ。


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