中国・アモイ―台湾・金門島、新型肺炎で客船停止

2003/06/10/23:02読売新聞WEB版

 【アモイ(中国福建省)=伊藤彰浩】中国大陸と台湾の間で行われる直接往来の窓口となってきた台湾・金門島の地元議会が、中国で猛威を振るう新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の流行予防のために対岸の福建省・アモイ(廈門)との間を往来する客船の運航停止を決め、船の往来が先月中旬以来ストップしている。

 限定的な直接通航として2001年1月に始まった客船の往来は台湾への便利な交通手段として定着し、中台間の経済的関係が年々深まっているだけに、アモイの台湾人ビジネスマンはイライラを募らせている。

 アモイ市東部の和平ふ頭から出航していた金門島行きの客船(週12便)が台湾側の要求で止まったのは先月20日。乗船券売り場には人影がなく、1か月間の運航停止を知らせる告知だけが目立つ状態だ。

 同市に進出した台湾企業でつくる「アモイ市台商投資企業協会」によると、市内の台湾企業は約2100社。ビジネスマンの数は推定5、6万人に達する。アモイ市への昨年の投資額は台湾が香港を抜いて7億5000万ドルと第1位。台湾・アモイ間の貿易額も前年比21%増と急増している。

 台湾との往来には香港や日本経由の航空機便を乗り継ぐ方法もあるが、金門島まで航路を利用し、同地から本島に航空機便で向かう方法が「断然、便利だ」(呉進忠会長)といい、往来ストップの影響は小さくない。サンプルの持ち込みなど、人の行き来が必要な仕事もあり、「長引けば影響も出てくる」(同)状況だ。

 台湾・陳水扁政権は、中国が求める「3通」(中台間の直接通航、通商、通信)を拒む一方、経済界の意向を受け、金門島と馬祖島に限って大陸との往来を認める「小3通」を2001年1月に開始。中国政府はこれを否定的に評価しているが、大陸沿海部の各地域で外資の誘致合戦が強まる中、アモイ市にとって「小3通」の利点は増大している。

 福建省内の新型肺炎患者はすでにゼロになっているだけに、「小3通」の再開は時間の問題とみられるが、地元に及ぼす影響は、台湾と大陸沿岸部の経済的結合の強まりをあらためて浮かび上がらせている。


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