北京の渡航延期勧告解除で対中ビジネス再始動

読売新聞WEB版
2003/6/24/23:16

 外務省が24日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の沈静化に伴い北京への渡航延期を呼びかける「危険情報」を解除したことから、日本企業は北京への出張禁止の解除や商談再開の検討に入るなど、対中国ビジネスの正常化に向けて動き始めた。

 沖電気工業は同日、北京への出張禁止の解除を決めた。これで中国全域の出張が可能になり、同社で依然出張禁止としているのはカナダ・トロントと台湾だけとなった。

   丸紅も、北京への出張自粛と日本帰国後の10日間の自宅待機の規制を解除した。富士ゼロックスも、4月から続けてきた中国などからの帰国者の10日間の自宅待機の見直しに入った。

 キヤノンは「原則禁止」の北京出張を今週中に必要最低限ながら認める方針だ。4月から見合わせていた北京駐在員の赴任を行う予定で、現地での本格的な商談再開も近いとしている。

 東レでは6月末までに、日本に戻っている北京駐在員を再渡航させることにした。このほか、三菱商事やホンダ、三菱重工業などは世界保健機関(WHO)の勧告解除を受けて出張の解禁を検討する。

 北京への出張を禁じていたシャープも、禁止措置の緩和を検討する。ただ、「いったん終息したと見られた後に患者が再発生したカナダ・トロントの例もあり、すぐに解除ということはない」(日立製作所)など依然として慎重な見方の企業もある。

 航空、旅行各社も、7、8月の最需要期に向け、旅客の巻き返し策を早速打ち出し始めた。

 ◆航空各社旅行業界、巻き返しへ攻勢◆

 日本航空システムは週7便まで減便していた成田―香港線を、7月1日から週14便体制に戻す。成田―北京線も近く便数を以前と同数に回復させる計画で、「国際線の落ち込みは6月が底で、中国が回復すれば7月から徐々に上向いてくる」と見ている。

 全日本空輸も、成田―北京、成田―大連、関西国際空港―北京の3路線について、5月から続けてきた減便、運休を中止する予定だ。既に便数を通常に戻している香港線と合わせ、中国路線は全面的に回復することになり、「国際線全体でも夏場に向けて予約が増えており、ようやく明るい兆しが見えてきた」と胸をなで下ろす。

 旅行最大手のJTBでは、利用者に注意を促しながら販売してきた香港行きの旅行を23日から通常の体制に戻した。販売を中止している北京行きツアーも、25日から全面的に再開する。夏の旅行シーズンは「中国方面の旅行は元々人気があり、利用者の不安さえなくなれば回復するだろう」と予想している。

(2003/6/24/23:16 読売新聞)


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