中国動物業者での血清学調査

成田検疫所
2003/10/21

[OUTBREAK:002952] 海外感染症情報 2003/10/21

           ●SARS - 中国動物業者での血清学調査

情報源:CDC MMWR 10月17日、52(41);986-987
     http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5241a2.htm

動物業者での抗SARSコロナウイルスIgG抗体陽性率-中国広東省、2003年。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)は2003年にSARSコロナウイルス(SARS-CoV)が原因の感染症と確認された。このウイルスはこれまでヒトでは観察されなかったコロナウイルス科に属するウイルスである。SARS-CoVの核酸配列データが既知のヒトコロナウイルスのそれと異なるため、SARS-CoVは動物宿主とヒトの間にある種のバリアを越えたと考えられている。この報告は広東省の公衆衛生当局が行った調査結果を要約する。

調査では動物業者(生きた動物市場の従業員)での抗SARSコロナウイルスIgG抗体陽性率を対象群のそれと比較した。結果は、動物業者の13%(以前にSARSと診断された人はいない)が抗SARSコロナウイルスIgG抗体陽性であったのに対し、対象群では陽性者は1〜3%であった。この結果はSARSの動物起源仮説を間接的に支持するものであるが、SARSの動物起源説を確認するためには、詳細な患者病歴とさらに詳細な動物調査の必要性も強調される。

広東省広州にある3カ所の動物市場の業者が調査に参加するよう要請され、2003年5月4日に同意した業者から検体が収集された。

検査された792名中、SARS-CoVに対するIgG抗体は72名(9.1 %)で検出された。陽性率は対照3群(1.2〜2.9%)と比較し、業者群で最高(13%)であった。業者での抗体陽性率は対照群全体での陽性率よりも有意に高値であった(χ2乗= 26.1; p<0.01)。対して、対照3群間では陽性率に有意差は認められなかっった(χ2乗= 0.89; p = 0.64)。

業者群では、最も陽性率が高値であったのは主にハクビシンを扱っていた業者(72.7%)で、以下イノシシ業者(57.1%)、キョン(muntjac deer)業者(56.3%)、野ウサギ業者(46.2%)およびキジ業者(33.3%)であった。抗SARS-CoV IgG抗体陽性率は市場ごとに異なった(それぞれ、6%、11%、20%、p<0.001); 抗体陽性率と性、年齢、動物市場での就業年数との間には相関は認められなかった。広東省でのSARS流行の間に、SARSや異型肺炎と診断された人は含まれなかった。

表1−動物業者と対照群(群)抗でのSARSコロナウイルス(SARS-CoV)
     IgG抗体陽性率―中国広東省、2003年。

群:検査数/検査陽性(陽性数 / 陽性率(%))
動物業者 508名/(66名/13.0%)*
病院職員 137名(4名/2.9%)
広東省CDC職員 63名(1名/1.6%)
健康診断で訪れた健常人 84名(1名/1.2%)

表2−主に扱う動物種ごと、特定の動物商人のSARSコロナウイルス
    (SARS-CoV)のIgG抗体価陽性率*:
    業者人数/検査陽性(数/%)/相対危険度/(95%CI:信頼区間)

ハクビシン 22/ (16/ 72.7) / 7.9 / (5.0-12.6)
タヌキ 28/ (16/ 57.1) / 6.2 / (3.8-10.3)
キョン(Muntjac deer) 16/ (9/ 56.3) / 6.1 / (3.4-10.9)
ノウサギ 13/ (6/ 46.2) / 5.0 / (2.5-10.2)
キジ 9/ (3/33.3)/ 4.9 / (0.7-24.8) **
ネコ 43/ (8/ 18.6)/ 2.0 (1.0-4.2)
その他家禽 25/ (3/ 12.0)/ 1.3?? (0.2-5.0) **
ヘビ 250/ (23/ 9.2)/ 参照群

*分類は重複が有り。
**相対危険度(Odds比)と95%CIはFisher抽出法で算出。
 


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