新型肺炎感染の台湾研究者、シンガポールから戻り発症

読売新聞WEB版
2003/12/17

 今冬初の新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染者が台湾で出たが、この男性は国防医学院予防医学研究所でSARS研究にたずさわっていた研究者で、ごく限られた場所で起こった“研究所内感染”だったと見られる。

 この研究者は発熱後に自宅で寝ており、今のところ、多くの一般市民が感染する恐れはないものと思われる。しかし適切、迅速な封じ込めを「初動」において行うことが大事で、国内の専門家も「接触者調査を急ぐ必要がある」と指摘している。

 この研究者は今月7日からシンガポールの学会に出席、台湾に戻った後の10日に発熱などの症状が出た。SARSが感染するのは発症後なので、この学会参加者に感染した可能性は低いとみられる。家族や同僚にも今のところ発熱などの症状は出ていないという。SARSウイルスを扱う研究者が感染した例としては、今年9月にシンガポールで起こった例があるが、このケースもほかへの感染はなかった。

 感染症に詳しい山内一也・東京大名誉教授は「SARSの感染者はいつ出てもおかしくはないということで、世界が警戒してきた。台湾での感染者の発生そのものは驚くべきことではない。ただ、今はSARSウイルスの特徴もかなり分かり、多くの感染者が出ていた台湾当局は対応のノウハウも持っているため、それほど恐れることはないだろう」と冷静に見ている。

 感染の封じ込めには初動での適切な対応が、その後の事態を決めるため、「迅速に徹底した調査を進めるべきだ」としている。

(2003/12/17/13:55 読売新聞)


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