SARS 広東省隣接の香港、マカオで厳戒態勢

毎日新聞WEB版
2003/12/27

【台北・飯田和郎】中国南部、広東省広州市の男性(32)が27日、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)に感染した疑いがあると診断されたことで、広東省に隣接する香港やマカオは即日、厳戒態勢に入った。新年や1月下旬の春節(旧正月)の休みを控え、中国本土との人的往来が増す時期でもあり、「SARS再来」の悪夢がよぎる。台湾の衛生当局も警戒を強める措置を取った。

 香港では今年前半、大流行したSARSで299人が死亡した。香港からの報道によると、香港特別行政区の林秉恩衛生署長は27日、広東省の衛生当局から26日夜の時点で「SARS感染の疑いのある患者が出た」との一報を受けたことを明らかにした。

 林署長によると、広東省政府と密接に連携を取っており、同省との境界にある羅湖などの出入境ポイントでは、すでに入境者全員に健康状態に関する申告書の提出と体温測定を義務付けている。また、公立病院ではSARSへの警戒レベルを「黄色」の段階に引き上げたという。

 林署長は一方で、感染が疑われる男性が最近、香港を訪れていないことなどから「パニックになる必要はない。各自が予防策に努めるべきだ」と市民に平静を呼びかけた。

 再流行した場合の経済活動への影響についても、懸念の声が早くも上がっている。27日は土曜日で、株式市場は休みのだったが、今年前半の大流行時は香港経済へのダメージが大きかっただけに、経済界からは衛生署や出入境当局に管理の徹底を求める意見が強まっている。また、回復基調にある観光客への影響も心配されている。

 一方、台湾衛生署(衛生省)は27日夕、記者会見し、中国大陸、香港、マカオから台湾を訪れた全ての旅客に入境後、体温測定などの健康管理を行うよう求める措置を発表した。

 台湾でも今年前半、SARSがまん延したのは、香港からの渡航者が発端だった。それだけに、衛生署はSARS侵入を防止する水際作戦に全力を挙げる方針だ。

 台湾では今月17日、国防部(国防省)の医療研究所に勤務する男性研究者(44)が所内での処理ミスとみられる原因で、SARSに感染したばかり。ただ、今回は感染経路も判明しておらず、自然発生の可能性も否定できないだけに当局は神経を尖らせている。


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