ハクビシン大量処分に賛否 中国で論争

毎日新聞WEB版
2004/01/07/19:25

【北京・浦松丈二】新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の感染源と疑われる野生動物ハクビシン約1万匹の大量処分が中国広東省で進められているが、中国国内では動物愛護団体から処分反対の声が出るなど「論争」が巻き起こっている。

 広東省では10日までの期限で省内で飼育されているハクビシンすべてを処分する方針が決まり、連日、撲滅作戦が続けられている。対策を担当する広東省疾病予防対策センターの許鋭恒副主任は「牛海綿状脳症(BSE)の流行でウシを大量処分するようなものだ。伝染病予防では人道主義に反する行為も必要になる」と処分の正当性を訴える。

 一方、北京生物多様性保護研究センターの郭耕副主任は「自然界に返すべきだ。これはウイルスをまき散らすことにはならない。ハクビシンはヒトを見れば逃げる野生動物なのだ」と処分に反対する。野生動物を食べる人間の習慣に問題があると指摘する声も出ている。

 世界保健機関(WHO)中国代表部は「ハクビシンが感染源として特定されたわけではない」と中国政府に慎重な対応を促している。疑いの段階で野生動物をむやみに撲滅すれば、感染源の特定が難しくなるとの懸念もあるからだ。

 広東省広州市で入院中の男性患者(32)が6日、新華社通信に対し、11月初旬に自宅の浴室に入り込んだネズミに触れたと話したことから、新たにネズミも感染源として疑われている。

 SARSコロナウイルスは動物間でも伝染するとされており、広東省政府は今後、ハクビシンだけでなく、アナグマやネズミ、ゴキブリなど感染源と疑われる生物の撲滅作戦「愛国衛生運動」を展開する方針。愛護団体側の反発も強まりそうだ。(毎日新聞)

[2004年1月7日19時25分更新]


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