新型肺炎ウイルス、3段階の進化で強力に変貌…米誌

読売新聞WEB版
2004/1/30/10:48

 【ワシントン=笹沢教一】再流行が懸念される新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の病原体「SARSウイルス」は、動物のウイルスから3段階の進化を経て、人間に強い感染力を持つ強力ウイルスに変貌(へんぼう)したことが、米シカゴ大や中国ヒトゲノムセンターなどの遺伝子分析で明らかになった。29日付米誌サイエンスに掲載された。

 感染源とされるハクビシンのウイルスと流行初期のウイルスが一致するなど、感染ルート解明の手がかりになる結果も得られている。効果的なワクチンや治療薬の開発などに応用が期待される。

 研究チームは、流行の初期から終息するまでの各患者からウイルスを集め、ウイルスの遺伝子配列を分析した。その結果、遺伝子の変化の状態が初期、流行拡大期、終息期の3つに区別できることを突き止めた。

 一昨年末の初期の患者から得られたウイルスは、中国湖北省のハクビシンなど2種の動物のコロナウイルスと一致。この時点では、患者との接触で感染する確率は約3%だったが、その後、人を介して感染するうちに、遺伝子が急速に変化し人への強い感染力を獲得した。

 さらに、2―3か月後の流行拡大期には、人間同士の接触による感染率が約70%に達したが、逆に遺伝子の変化する速さは落ち着き、昨年夏の終息期には、1つの遺伝子型のウイルスだけが残ったという。

(2004/1/30/10:48 読売新聞)


もどる