タイ政府、感染隠し?「昨年12月検出」証言も

読売新聞WEB版
2004/1/23/23:58

【バンコク=川辺徹】鳥インフルエンザの感染が確認されたタイで、政府が事実の確認と発表を先送りしていたのではないかとの声が上がるとともに、タクシン政権の危機管理能力を疑問視する声が強まっている。「ウイルスは昨年検出されていた」とする関係者の「証言」も報道され、「隠ぺい疑惑」も持ち上がった。

 農業・協同組合省は、同国中部で鶏の大量死が発生した遅くとも昨年11月下旬に調査を開始した。事態が明るみに出たのは今月中旬だったが、ネウィン副農協相は記者会見で、「検査の結果、死因は家きんコレラと鶏伝染性気管支炎だった」と繰り返した。

 同省は16日、昨年11月21日以降、85万羽が死んだり処分されたと発表していたが、保健省が感染を確認した23日には、処分した鳥は約710万羽に上ると大幅に数字を修正した。1週間で数字が8倍以上も膨らんだ形だ。

 タクシン首相は17日のラジオ演説で、「鳥インフルエンザではない。何度も確認されている」と発生を否定。ニラン上院議員が「感染を確認した」と発言した22日にも、「検査結果を待たなければならない。鶏肉市場に与える影響が大きいのでメディアなどはパニックに陥るべきでない」と、ことさらに鳥インフルエンザを否定するような説明に終始した。

 英字紙ネーションは23日、「隠ぺいは昨年始まった」との記事で、政府が実態を知りながら隠していたと指摘。事情を知る関係者の話として、「昨年12月初め、国立研究所で鶏の検体から(鳥インフルエンザ)ウイルスを検出した。他の2機関によっても確認された」との証言を伝えた。

 経済への悪影響が広がるのを恐れて政府が事実を隠していたとすれば、鳥インフルエンザへの不安とともに、タクシン政権への不信感も強まることになろう。

(2004/1/23/23:58 読売新聞)


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