中国で「鳥」対策強化、人口大流動で感染拡大心配

読売新聞WEB版
2004/01/28/15:29

 中国南部の広西チワン族自治区でアヒル200羽が死んだ原因が鳥インフルエンザであることが確認されたことを受けて、中国政府は、感染拡大防止に向けて、対策強化に乗り出した。

 春節(旧正月)前後の40日間は、中国国内で延べ約19億人が移動するとされる人口大流動の時期。このタイミングで感染が確認されたことについて、「人から人への感染が確認されたわけではないので実情は不明だが、家禽(かきん)類との接触が多い農村に里帰りした大勢の出稼ぎ農民が都市部にUターンすることで感染拡大が心配される」(関係筋)との見方も出ている。(北京 佐伯 聡士、香港 関 泰晴)

 旧正月の休みは28日に終わる。出勤に備えて、28日は道路交通だけで延べ3400万人が移動するという。出稼ぎ農民の中には、生きた鶏やアヒルを持って列車や長距離バスを利用する者も少なくない。一部都市では、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)対策で、乗客の体温検査などが行われているが、万全とは言えない。

 鶏やアヒルが死に、鳥インフルエンザの疑いがあると報告された中国中部の湖北省と湖南省は、家禽類の集積地で、香港への輸出の中心基地でもある。ウイルスに接触し、感染した可能性のある鶏やアヒルを適切に処分し、隔離することが急務となっているが、小規模な農家が多く、インフラもぜい弱な農村部で徹底した措置が取れるかどうか厳しい見方も出ている。

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 1997年の鳥インフルエンザの流行で死者6人を数えた香港では、衛生当局が27日、広西チワン族自治区、湖南、湖北両省の鳥肉輸入禁止を発表し、「中国政府と緊密に連絡を取る」としている。一方で、発覚当初は事実関係をなかなか認めようとしない「中国的手法」に疑問の声も出ている。

 中国政府は、鳥インフルエンザ対策として、北京市で今月22日からの旧正月期間中も、検疫当局が市場や養鶏場などを調査。広西チワン族自治区では国境での検疫強化を実施していた。しかし、同自治区内での鳥インフルエンザ感染については、香港紙がまず報道して、当局は27日になってようやく確認した。

 香港のマスコミでは広東省の養鶏場で1000羽あまりが「異常死」したといった未確認情報がとびかっている。

 ◆鶏肉輸入停止で外食業界など「材料調達は…」◆

 中国産鶏肉の輸入停止決定を受け、外食産業や流通業界は二十八日午前、対応に追われた。米国産牛肉やタイ産鶏肉の輸入停止がすでに決まっており、外食産業などは「材料調達できなくなる」と頭を痛めている。

 大手スーパー「ジャスコ」を展開するイオン(本社・千葉市)は、中国産鶏肉の生肉の販売中止を決めた。焼き鳥など加熱調理品の販売を続けるかどうかは検討中としている。イトーヨーカ堂(本社・東京)は、焼き鳥の一部に中国産鶏肉が含まれているが、加熱品は問題ないとして、在庫品の販売は続ける方針だ。

(2004/1/28/15:29 読売新聞)


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