「処分の鳥、焼いて食べた」アヒル大量死の中国・農村

読売新聞WEB版
2004/01/29/02:08

 【南寧(中国広西チワン族自治区)=伊藤彰浩】「村を封鎖し、鶏、アヒル、ガチョウ、ハトを処分し、無害処理する。封鎖は21日間」。中国で初めて鳥インフルエンザが確認された広西チワン族自治区南寧市郊外の隆安県では28日、アヒル大量死の現場となった小さな農村、丁当鎮の1集落に入る唯一の農道はロープで封鎖され、前日付の真新しい張り紙が、木に張り付けられていた。

 ロープの前には、机1つがポツンと置かれた急ごしらえの検問所があり、防疫職員と警官が1人。この集落の住民は外部に隔離されたといい、香港や国内の記者を除けば、周囲はひっそりと静まり返っていた。

 ところが、封鎖されていない丁当鎮の村の中心部に入ると、人々には驚くほど緊張感がなかった。道ばたで魚やソーセージのくし焼きを売っていた30歳代の女性は「病気の話は25日に地元政府から聞いた。でも家にいる鶏やアヒルを殺せというだけで、病気のことはわからないので、特に怖くない」と明るく笑う。

 村民の中に、鳥インフルエンザが世界的な騒ぎになっていることを知っている人は見当たらず、「殺した鳥を焼いて食べてしまった人もいた」という発言もあった。また、同村生まれの男性農民(59)は「24日の午後に話を聞き、自宅の20羽の鶏を殺した」と話した上で、「酒を飲んでいるから大丈夫だ」と冗談交じりに語り、人への感染を恐れる様子は全くなかった。

 南寧市内のタクシー運転手によると、地元の多くの一般市民が鳥インフルエンザの確認を知ったのは「きょう(28日)のニュース」といい、疑い例が23日に報告された時点では、当局から警戒が全く呼びかけられなかったのは明らかだった。

 同自治区に隣接する広東省では、昨年初め、後に新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)と判明する「奇病」騒ぎが広がったが、病気に効くといわれた酢の買い占め騒ぎが収まった後は、十分な情報公開が行われないまま、感染に対する関心が著しく薄れた。今回も、地元当局の対応を見るかぎり、昨年のSARSの教訓を十分に踏まえているとは言えず、一層の防疫体制と情報公開が求められそうだ。

(2004/1/29/02:08 読売新聞)


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