中国・上海、鳥インフルエンザ「疑い」で警戒強化

読売新聞WEB版
2004/01/31/23:11

 【上海=伊藤彰浩】中国の大都市で初めて鳥インフルエンザの疑い例が発生した上海市では31日、問題となったアヒルを飼育していた南匯(なんかい)区の飼育農家周辺付近で家きん類の持ち込み・持ち出しが禁止されるなど、警戒措置が強化された。

 当局は現在調査中だが、飼育農家経営者は「今回の病気は感染が速い」と語り、恐怖感を隠さなかった。

 ◆農家「感染速い」◆

 疑い例の出た上海市南東部郊外の南匯区は、幹線道路を少しはずれると、小麦畑や野菜畑が広がる農村地帯。29日に感染の疑いがあるアヒルが死んだ飼育農家の許生偉さん(34)は、「エサを食べないなど28日から調子のおかしかったアヒルが29日午後に急に200羽死んだ。数時間のうちに広がったが今までこんなことはなかった」と語った。

 上海市は、許さんが市から指導された家きん類への予防接種をしなかったのが原因と指摘したが、13年にわたりアヒル飼育をしてきた許さんは「今までの経験ではアヒルの病気は大したことはないと思っていた」という。

 ◆3万5千羽を処分◆

 上海市は人口1600万人の大都市だ。1月半ばから市長をトップとする予防チームを組織し、厳戒態勢下にあったが、疑い例発生後、衛生部門などをフル稼働。29日深夜から30日朝までかけて、問題の飼育場周辺にある6か所の飼育場のアヒル3万5000羽をトラック40〜50台で運び出し、廃棄物処理場で処分した。

 同市スポークスマンは31日、上海で人への感染疑い例が見つかったと報じた香港紙の報道を否定。妻と同居する許さん一家など、周辺のアヒル飼育農家十数人も健康だ。ただ、上海市当局は2000人規模の職員を動員し、家きん類の市への出入りチェックを開始したほか、市内2か所の動物園で鳥への接近を禁止する措置が取られるなど、警戒の度合いを高めている。

 もっとも、市内ではこれまでのところ、鶏肉の販売はほぼ平常通り行われており、鶏肉を使ったファストフード店でも「若干、客が少なくみえる程度」(ある市民)。疑い例発生による市民生活への目に見える影響は出ていない。

 ただ市民の間では、「当分は鶏肉は控える」(40代の会社員)という声も出始めており、これまで「遠くで起こっている話」がひとごとでなくなったのは確かだ。衛生当局による調査結果によっては、中国の最先端都市に「激震」が走る可能性もある。

(2004/1/31/23:11 読売新聞)


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