インフルエンザ、人から人へ感染の疑い…WHO

読売新聞WEB版
2004/02/01/23:52

 【バンコク=大江志伸】世界保健機関(WHO)ハノイ事務所は1日、先月下旬に死亡したベトナム・タイビン省在住の姉妹2人が鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染していたことを確認するとともに、この姉妹は、「先に死亡した兄からの感染も、可能性の1つに考えられる」との所見を発表した。

 昨年末から韓国、日本、ベトナム、タイ、中国などアジア全域に広がった鳥インフルエンザの感染拡大に関連し、WHOが個別の症例について「人から人への感染の可能性」に公式に言及したのは、今回が初めて。

 感染国やWHOなどの国際組織、それに鶏肉輸入国は、先月28日にバンコクで緊急閣僚級会議を開くなど、鳥インフルエンザ制圧のための協力態勢を強化しているが、「人から人への感染」の可能性が排除できない状況になったのを受け、ワクチンの早期開発など、新たな対応を迫られることになる。

 今回、H5N1感染が確認された30歳と23歳の姉妹は、先月10日に発症して3日後に入院したが、同23日に死亡。鳥インフルエンザの症状があったため、検体を香港のWHO関連施設に送り、検査の結果、陽性と判定された。ベトナム保健当局は、先月28日、この姉妹は鳥インフルエンザで死亡したとの、独自の調査結果を発表していた。ベトナムでの鳥インフルエンザ感染者は、これで10人(うち8人死亡)となった。

 WHOによると、31歳の兄は、姉妹が発症した2日後の先月12日に死亡。遺体は火葬された。

 このため、兄の検体は確保できなかったが、この一家では鶏を飼っておらず、感染経路は不明。WHOハノイ事務所は、「現時点で人から人へ本格的な感染が起きている兆候はない」としつつ、「兄から姉妹への感染が可能性の1つとして考えられるのは、姉妹が病気にかかった鳥と接触するなど、(発症につながる)状況がないためだ」と述べている。

 また、兄は昨年12月下旬に結婚し、同居していた妻も先月13日に入院、同20日退院したが、感染の疑いもあり、現在、血液検査を行っている。

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 今回の情報について、厚生労働省には1日夜の段階で、WHOやベトナム政府から公式、非公式ともに連絡はないという。

(2004/2/1/23:52 読売新聞)


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