中国政府、“鳥”対策に躍起…現場では徹底されず?

読売新聞WEB版版
2004/02/03/02:33

 【北京=竹腰雅彦】鳥インフルエンザの感染が広がる中、中国政府は、正確な情報公開の指示、政府対策本部の設置など、感染拡大防止策を次々に打ち出している。初動対応が遅れて国内外に感染を広め国家の信用失墜を招いた新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)のケースを教訓にした措置だ。だが、現時点では、政府の方針が現場にまで徹底されているとは言えない。

 広西チワン族自治区で初の鳥インフルエンザ発生が確認された翌日の先月28日、農業省は全国の関係部局に「情勢は非常に厳しい。感染把握から24時間以内に報告しなければならない。情報隠しは絶対に許さない」とする緊急通達を出した。

 29日には、温家宝首相が国務院(政府)常務会議を開き、〈1〉迅速な発見・処理・予防策の実施と正確な情報公開〈2〉家きんが処理された農家への補償〈3〉ワクチンの無料投与など、8項目の対策を決定した。

 さらに、30日には、回良玉副首相を長とし、農業省、衛生省など全関係部局で構成する政府対策本部を発足させた。外遊中の胡錦濤国家主席は31日、「人民の生命と健康を第一に考えている」と語り、不安感の払しょくに努めた。

 一連の措置はすべて、2002年秋から昨年春にかけてのSARSでの失敗を踏まえたものだ。

 SARS流行時、大きな弊害を生んだ情報隠しには特に厳しい。情報を隠した政府幹部や衛生部門責任者は、法規に基づき、降格、解任、免職処分になる見通しだ。

 また、今回は、補償金やワクチンの無償供与で生産者らのカネの問題を解決しようとしている。SARS感染者の多くは、当初、高価な医療費が支払えず通院を避けた。新華社電によると、感染地域では、処理された鶏1羽につき15―25元(1元=約14円)、アヒル1羽に15―18元の補償金が支払われたという。

 対策本部設置の背景にも、行政の指揮系統が混乱、中央と地方、軍などの情報が食い違い、政府の統一指揮が取れなかったSARS流行時の教訓がある。指導者が先頭に立って国民の不安を解消することの重要性は、SARSで認識された。

 しかし、現場レベルでは、責任回避や煩雑な対策を逃れるため、正確な報告を敬遠する風潮がまん延しているとされる。「今ある情報が正確かどうかを判断するには、今後の推移を見る必要がある」(外交筋)との声も出ている。

 同自治区のケースでは、香港紙が先月26日に疑惑を報道した翌日、発生を発表。また湖北、湖南の例でも、同26日時点で感染疑いが当局に報告されていたにもかかわらず、発表は27日だった。他の感染疑い地域でも、家きんの異常が「いつ発見されたのか」について、公式には発表されていない。

 外務省報道官は、発表まで時間を要したことについて、「最終特定するための正確な調査が行われていた」とし、「情報隠し」との見方に強く反論した。

(2004/2/3/02:33 読売新聞)


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