浅田農産の会長夫妻が自殺

読売新聞WEB版
2004/03/08/13:36

 今年国内3例目の鳥インフルエンザ感染が確認された京都府丹波町の「浅田農産船井農場」を経営する浅田農産の浅田肇(はじむ)会長(67)と妻知佐子さん(64)が8日朝、兵庫県姫路市豊富町神谷の同農産本社の鶏舎近くで、首をつって死亡しているのが見つかった。

 自宅に「たいへんご迷惑をかけました」などと書かれた遺書があった。姫路署は、船井農場の届け出の遅れや感染拡大への責任を感じ、自殺したとみている。

 同日午前7時40分ごろ、鶏舎近くの空き地のクスノキで、2人が首をつっているのを従業員が見つけた。2人は近くの自宅に運ばれたが、すでに死亡していた。

 調べによると、空き地は本社事務所北側の鶏舎と資材置き場の間。2人は背中合わせの状態で首をつっていた。会長は会社の上下の作業着、知佐子さんはグレーの服とズボン姿だった。木の下には2つのプラスチックの買い物かごがあった。

 遺書は白い紙にボールペンで書かれ、自宅のダイニングルームのテーブルに置かれていた。

 浅田会長は7日午後、本社で長男の浅田秀明社長(41)らと記者会見し、これまでの経緯などを聞かれ、「司法の場で明らかにしたい」と話していた。

 浅田会長は、父親の養鶏業を引き継ぐ形で、1973年に会社を兵庫県佐用町に設立した。74年に本社を姫路市内に移し、翌年、浅田農産と改称、一代で年間売上高30億円を超える企業に育て上げた。2001年5月に日本養鶏協会の理事となり、昨年5月から副会長を務めていたが、鳥インフルエンザ問題での対応を批判され、先月28日に辞任を申し出た。協会側は、今月1日付で解任通知を出していた。

 知佐子さんは、浅田農産の役員を務めている。

 民間の信用調査機関によると、浅田農産は5農場で、175万羽(昨年10月現在)を飼育している。

 浅田農産については、京都府が家畜伝染病予防法の届け出義務違反容疑で府警に告発する方針を固めている。府はすでに、従業員らの事情聴取を進めており、鶏を埋めるなどの防疫措置が一段落した時期を念頭に、具体的な告発日程を農水省と協議、最終決定する。府の幹部の1人によると、「社長から事情を聞いたが、会長からはまだだった」という。

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 浅田会長の自殺は、京都府の告発準備や告発を受けての府警の捜査へも影響が出そうだ。

 府警の幹部は「(自殺の)詳細は把握していない。(捜査への影響は)コメントすることではない」としているが、今後、浅田会長から事情を聞くことにしていただけに、何らかの影響は不可避とみられる。

 府警は、これまでの秀明社長の事情聴取などから、船井農場で鶏が大量死していた当時、浅田会長は、死んだ鶏を社長らとともに解剖したほか、同農場で対応していた社長から農場の状況を逐次、報告を受けていたとみている。

(2004/03/08/13:36 読売新聞 )


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