野鳥「闇市場」、捕獲禁止の鳥に次々競り声

読売新聞WEB版
2004/04/01/03:03

 捕獲や売買ができないはずの野鳥を高値で取引する「闇市場」がある。警視庁はこれまでに、ペットショップ経営者など計27人を逮捕、密猟された532羽を押収した。捕獲網の密造業者からペットショップまで連なる、野鳥の密猟・密売ネットワークがひそかに広がっている。

 昨年10月、警視庁生活環境課の捜査員たちが、東京・足立区にあるペットショップの倉庫を取り囲んだ。

 積み重ねられた段ボール箱の陰で、テーブルを囲んでいたのは、10人ほどの男たち。テーブルに野鳥が入った鳥かごが置かれる。進行役がマイクを握った。

 「2000円から始めます」

 男たちから、次々と買値の声が上がる。「3000円」「3500円!」

 競りの異様な熱気が最高潮に達したころ、合図とともに捜査員が一斉に踏みこんだ。「そこまで!」。倉庫内に捜査員の大声が響いた。

 この倉庫では、2001年から毎週金曜日に競りが開かれていた。鳥獣保護法で、国内では捕獲・売買が禁止されているメジロ、ウグイス、オオルリなどの野鳥が、こうした闇市場を通じて取引され、数年前から一部のペットショップで半ば公然と販売されている。

 関係者によると、野鳥の闇市場は、関東だけで少なくとも4か所あるという。警視庁はそのうち2か所を摘発した。

 野鳥の多くは、福島、茨城、千葉県の山林で、「かすみ網」と呼ばれる目の細かい網を木の間に張って密猟されていた。網は三重県の2つの業者が密造し、千葉県のペットショップなどで販売していた。

 野鳥の値段は、闇ルートの中でつり上がっていく。あるホオジロは1500円で密猟者からブローカーに売られ、競りにかかった。それを都内のペット店が5000円で競り落とし、マニアが1万円で買っていった。

 全国に数万人いるとされるマニアは、「鳴き合わせ会」と呼ばれるコンテストを開いて、鳴き声で勝負を競い、鳥を「横綱」「大関」などとランク付けする。ランクの高い鳥は数十万円で売買されることもあり、闇市場が発生する背景となっている。

 逮捕され、罰金刑を受けたペット業者の1人が重い口を開いた。「ペット業界は大型店に押され、小規模なペットショップは苦しい。野鳥を扱えば、高額で買ってくれる客がいる」

 こうした現状に、日本野鳥の会の古南幸弘・自然保護室長は、法の不備を指摘する。「鳥獣保護法には、輸入された野鳥に対する規制がない。国内で密猟された野鳥を販売していても、輸入したと言い張られると追及できない」  摘発逃れのため、鳥かごに虚偽の「鳥獣輸入証明書」を張り付ける業者も多い。(社会部 村井 正美)

 ◆鳥獣保護法=マガモやカルガモなど28種の野鳥を除き、国内で生息する野鳥を捕獲・売買・飼育すると、最高で懲役1年、100万円以下の罰金が科せられる。かすみ網は、捕獲目的で所持していても罰せられる。ただし、メジロ、ホオジロは1世帯1羽までペットとして飼うことができる。輸入された野鳥の売買は規制されていない。

(2004/04/01/03:03 読売新聞)


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