新型インフルエンザ:流行は「時間の問題」と警告−−WHO事務局長

毎日新聞東京朝刊
2004/04/19

 【ジュネーブ大木俊治】世界保健機関(WHO)の李鍾郁(イジョンウク)事務局長(59)は、昨年7月の就任以来初めてとなる21日からの訪日を前に毎日新聞と会見し、日本などアジアで発生した鳥インフルエンザが変異して「人類の世界的流行病になるのは時間の問題」と警告、「拡大してからではばく大な費用がかかるが、事前準備は少ない投資で済む」と日本の一層の協力を求めた。

 WHOは、鳥インフルエンザウイルスの変異が、周期的に世界を襲う感染症の爆発的流行に発展する事態を想定。同事務局長によると、今年アジアで流行したウイルス(H5N1型)のヒトへの感染を防ぐワクチン種が5月にも完成する見込みで、この種からワクチンを量産する体制について欧州などの製薬企業と協議しているという。

 またジュネーブのWHO本部では、世界各国と24時間オンラインで直結する感染症対策のオペレーション室を設置する工事を進めている。

 事務局長は、97年以後香港、オランダ、ドイツなどで鳥インフルエンザが報告されており、「昨年になって突然発生したのではない」ことを強調。「日本の人たちも当事者になってから慌てるのではなく、事前に国際的な対策を取ることの重要性を理解してほしい」と訴えた。

 一方、就任から9カ月の成果として、エイズ対策の第一歩として「05年までに300万人のエイズ患者に治療薬を供与する(3バイ5)計画」を始動させたことを指摘。今後の重要課題には、資金確保も含めた同計画の確実な実現▽あと7カ国で足踏みしているポリオの地球上からの根絶▽生物テロ対策への取り組み−−などを挙げた。

 李事務局長はWHO生え抜きで、韓国人では初めての国際機関トップ。昨年のWHO総会でブルントラント前事務局長の後任に選出された。任期5年。夫人は日本人。

(2004/04/19 毎日新聞東京朝刊)


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