早期発見!くちのがん
〜くちのなかを観察しよう〜
日時: 平成20年2月2日午後2時〜午後3時半
会場: 大分市コンパルホール1階文化ホール
司
会 山形純平
大分大学医学部
(歯科口腔外科)
はじめに
平成20年2月2日、大分市コンパルホールにて第26回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会事務局、大分大学医学部歯科口腔外科学講座の主催で、市民公開講座「早期発見!くちのがん 〜くちのなかを観察しよう〜」が行われました。当日はあいにくの天候にもかかわらず、約200名の方がご来場し、講演に耳を傾けました。
この講演会は、本年の1月24日〜25日に別府市B-conプラザで行われた第26回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会の関連行事として開催されたもので、“くちのがん”つまり口腔がんの早期発見のための研究成果の一部を、一般の方々へわかりやすくお話ししました。講演後の感想も「大変わかりやすくてよかった」、「また機会があれば聞きたい」など、ご好評いただきました。
来場者からは多数の質問がありましたが、講演時間内ですべての質問にお答えできませんでしたので、このホームページ上でお答えしました。なお、口腔がんと直接関係のない質問につきましては、今回は割愛させていただきました。ご了承ください。 (文責:河野)
講演の内容(講演順)
1.「くちのなかの観察」
高橋喜浩
大分大学医学部附属病院
臨床准教授(歯科口腔外科)
1.「くちのなか」ってどうなっている?
今回の公開講座での話の内容がより理解しやすいように「くちのなか」の構造やその用語について解説しました。
<例>舌(ぜつ):「べろ」のこと。歯肉(しにく)「はぐき」のこと。口底(こうてい):舌と下顎歯肉との間の部分のこと。口蓋(こうがい):くちの天井のこと。など
2.「くちのなかの観察」ってどうするの?
洗面所に立って鏡の前での歯みがきではなくて、寝転がってテレビなどを見ながらの「ながら歯みがき」の方法、その他手鏡を使った観察方法やあなたが他の人の口の中を観察する方法についても紹介しました。
3.歯医者さんへの定期受診のすすめ
自分だけでは観察できない場所もあります。また、歯周病やむし歯があると粘膜の炎症が起こり観察しにくくなります。痛くなくても年に数回は歯科医院を定期的に受診してください。
2.「がんになる前のくちのなか」

河野憲司
大分大学医学部附属病院
臨床教授(歯科口腔外科)
くちの“がん”は突然できるわけではありません。正常の細胞は何年も何年もかけて、いくつかの段階を経て、最後にがん細胞に変わります。その途中の段階でできる病気は「前がん病変」と呼ばれます。
くちの前がん病変の代表は白板症とよばれる病気で、くちの粘膜が部分的に白くなります。白板症は約5%が“がん”になると言われています。しかし“がん”になるまでには数年〜十数年の長い年月がかかりますから、日頃からくちの中を見る習慣をつけておくと、多くの場合、“がん”になる前の段階で異常を発見できます。
白板症ができやすい場所は、舌の横や舌の裏、歯ぐきです。このうち舌にできた白板症は他の場所の白板症よりも“がん”になりやすいので、とくに注意しましょう。
白板症ができた場合、定期的に専門医(歯科口腔外科医)の診察を受けておき、“がん”が疑われた時点で治療するか、あるいは “がん”になる前に先手をうって切除するかのいずれかで対処します。専門医による適切な処置を受けましょう。
3.「くちのがんはどのように見えるの?」
柳澤繁孝
大分大学医学部
教授(歯科口腔外科)
くちの中を見る機会は一日に何度もあります。がんが出来たらすぐにも発見されそうですが、かなり進行してから来る方が少なくありません。異状に気付いても痛みが無いことでひとまず安心してしまいます。末期にはひどい痛みに苦しめられることが多いのですが、初期には痛くないのです。また、徐々に大きくなるため気付かないこともあります。不幸にしてがんになっても早期の治療で多くの人が大きな障害を残さずになおります。
潰瘍の まわりのしこりや もりあがり
血がにじむ 痛むことなく 治らない
話しにくい 食べにくい 入れ歯も合わず
くちくさい よーく見ればくちのがん よみびとしらず
4.「喫煙とがん」
清水正嗣 
大分医科大学 名誉教授
川嶌整形外科病院 名誉院長
日本禁煙推進医師歯科医師連盟会員
日本科学者会議幹事
「がん」にはいろいろな種類で、全身多数部位に発生するが、その治療を成功
させるためには、早期発見、早期治療が強調されている。しかし、難しい病気の最善の治療は、その原因を明らかにし、これを少しでも早く、確実にのぞくことにある、別に言えば、予防に勝る治療法はないということである。
原因として、第1に挙げられるものが、喫煙・タバコである。清水がこのことに気づいたのは、1960年、今から約50年前である。当時清水は口腔ガン、特に舌ガンの患者さんの記録を集め、原因究明に努めていた。その結果、舌ガンの患者さんには普通の人より喫煙者の多いことが分かり、日本で初めての研究として小さい論文を記載した。それと共に清水自身も10年間継続していた喫煙を廃絶して今日に至っている。
その後の研究では、喫煙は口腔・舌がんのみでなく、肺がん、喉頭がんから全身がんの発生に責任を持ち、喫煙者本人のみでなく周りの人にもがんを起こすことが分かってきた。これによって、禁煙は、ご本人のほか、家族、特に子供、若い女性のために非常に大切なことが解明され、多くの職場、公共の場において義務付けられることになっている。 日本禁煙学会HP http://www.nosmoke55.jp/
質問への回答
質問者 1
・くちのがんになった時、歯医者さんから「がんです」と宣告されるものなんですか?
回答:大分大学歯科口腔外科ではがんの患者さんには病気ががんである由を伝えます。その役目は診断を担当した者あるいは治療を担当摺る者が務めます。病名告知は患者さんが受け入れ準備が整ったとおもわれる時期です。
・くちのがんとは関係ない話ですが最近口臭がくさい人が多いように感じます。気付いてはいないのか口の中の衛生に無頓着なのかとも思いますが・・・。30代の人もたくさんいます。私達は食事する時必ず口から食物をとり消化吸収され排出すると言う過程をへますが、先生方は口の衛生について今後どういう方向性をもっておられるか是非教えていただきたく思います。
回答:口臭の原因は多様です。口腔衛生不良、呼吸器や胃の病気、食品や口腔乾燥などがあります。口腔衛生について:食後のハブラシによる清掃、咀嚼などの生活習慣が確立されていなければなりません。健康維持の一環として自らの努力で確立するようにすすめます。
質問者 2
・手術した人、再発はありませんか?
回答:再発はあります。
質問者 3
・口腔ガンと口内炎との関連は?
回答:有りません。
・口腔ガンから他の部位(他器官)への転移は?
回答:首のリンパ節、肺、肝臓、腎臓に転移します。首のリンパ節が多く、他は少ないです。
・口内炎の原因は解明できたか?
回答:刺激によるもの、ウイルスによるもの、免疫異常が原因としてあげられますが、解明できていません。
質問者 4
・口内炎によくなります。ガンとの関係はないですか?
回答:通常の口内炎では発癌と関係有りません。
・口の中が何時もだ液でねばった感じがします。ガンとの関係はありませんか?
回答:唾液の分泌が少ないのではないですか? がんとは関係有りません。
質問者 5
・口腔ガンを誘発する食品添加物はどんなもの?
回答:発癌物質は食品添加物として認可されていません。
質問者 6
・くちのがんは刺激がきっかけになるとききました。ほほの内側の粘膜をかむ癖があるのですが、がんの原因になりますか?
回答:長期にわたる異常な刺激はがんの原因となります。噛むのが癖になっているのならやめたらどうでしょうか。しかし、時々謝って噛む程度なら問題有りません。
質問者 7
・大腸がん、肺がんからくちの中のがんに転移することもありますか?
回答:希にあります。
質問者 8
・母が平成18年舌癌を発生、切除手術をし、悪性だったことから、舌の1/2切除と、リンパの切除手術をすすめられましたが、70歳という年齢から手術をしない治療を望み、現在大分大学病院に転院して、定期健診を受けていますが、耳鼻科を受診しています。が、今回の講座を聞き、口腔外科との連携も必要なのかと思いましたが、医大ではどのようにされているのでしょうか?
回答:口腔癌の治療は口腔外科と耳鼻科が行っています。現在は両科が連絡を取りあって治療をしているわけではありません。治療に際してはそれぞれの考えに従って治療しています。ただ、得意とする部分があり、必要によっては耳鼻科に診察や治療を依頼することもあります。
質問者 9
・病院どうしの連結(例えば国立医大と県立病院など)はどうなっていますか?
回答:歯科口腔外科では県立病院と附属病院との連絡は密に行っています。
・耳鼻咽喉科で舌の癌が見つかりました。手術をしましたが歯科口腔外科が妥当なのですか?
回答:舌癌の治療に習熟している診療科であれば、安心して良いでしょう。
質問者 10
・義歯や歯のちりょうで金やその他の合成物を使った場合、癌になりやすいか?歯ぐきがはれたり、舌に炎症ができるが、1週間くらいでよくなる。放っておいてよいのか?
回答:歯の治療に使用している材料で癌が誘発されることはありません。歯ぐきの腫れや舌の炎症が1週間で良くなるのであれば癌の心配はありません。しかし、症状が繰り返し起こるようなら口腔外科医の診察を受けると良いでしょう。
質問者 11
・私は20年前より口内炎ができやすく、できると良くなるまでに8〜2週間くらいかかります。今チョコラBBを常用し、1.5倍の量を飲んでいます。それでも月に1度はできます。口内炎と癌との関係はあるのでしょうか?できにくくする注意点を教えてください。
回答:口内炎が繰り返す、治りにくいことから、再発性アフタ、ベーチェット病や紅色扁平苔癬などの粘膜の病気が考えられます。一度歯科口腔外科で診察を受けると良いでしょう。
質問者 12
・口内炎になりやすい。なると1週間〜10日くらいでよくなる。周期的にくるようにある。
回答:繰り返すようでしたら、一度歯科口腔外科で診察を受けると良いでしょう。
質問者 13
・口のがんになりやすい、食べ物がありますか?
回答:食品では特にありません。口のがんを起こす可能性の高いものが喫煙です。
質問者 14
・舌がんの治療方法は?
回答:小さなものでは手術か組織内照射による放射線治療が行われます。再発の少ないの
は手術です。進展したものには化学療法・放射線と手術を組み合わせて治療します。
質問者 15
・舌の手術をした後の食事のすすめ方についてお教え下さい。術後のリハビリテーションは特にあるのですか?
回答:食品の選択や補助が必要かは口の状態によってことなります。個別に相談ください。
質問者 16
・舌を切除した時、人工的な舌を取り付けられますか?
回答:人工的な舌は出来ていません。
質問者 17
・舌癌で手術して3年過ぎました。言葉も普通で食事も普通です。予防で抗癌剤1日3回3年のみ。今年から先生の指示で止めています。止めての不安でいっぱいです。
回答:3年すぎていれば再発や転移が見つかる可能性は低いです。定期的に診察を受けているなら安心して、生活してください。
質問者 18
・右側の上の歯ぐきが固くて、盛り上がった感じです。痛みはありません。癌なのでしょうか?近頃気付きました。お願いします。
回答:癌の可能性が無いわけではありませんので専門医の診察をお勧めします。
質問者 19
・口腔癌になると全身に何か変化がありますか?
回答:全身への影響は末期になるとでてきます。通常全身への影響はありません。
質問者 20
・舌をやけどした時どのように対処したらよいですか?
回答:氷や冷たい水を口に含んで、痛みや傷の鎮静をはかります。組織が著しく障害される場合は抗菌薬や鎮痛薬で対処します。
質問者 21
・虫歯の根っこだけがのこっていますがほっておいていいですか。
回答:きちんと治療されている場合はそのままでも良いですが,虫歯やかぶせてあった金属が外れたり歯が折れたりして根っこだけになっている場合は,歯医者さんできちんと治療してもらう必要があります.
質問者 22
・老人の歯磨きはブラシのやわらかいのがいいですか?
回答:特別にやわらかいブラシにする必要はありません.
質問者 23
・舌の側面が少し痛むので病院で診察を受けました。舌痛症といわれ、何の心配もありませんと言われましたが、自然とよくなるのでしょうか?薬など何もいただいていません。
回答:舌痛症は中々完治の難しいものです。治療の目安は耐え難い状態にあるか、どうかと考えてください。
質問者 24
・舌下面の下に左右に異物があります。ある病院に行ってCTもとりました。ある病院に行ったらCTとかもとったけど両側にあるから大丈夫と言われて経過観察と言われた。しっかり診断をしてもらわないと不安なのでどうすればいいでしょうか?
回答:施設によって異なった診断や意見を云われることがあります。それぞれの専門や、
経験によって必ずしも同じ結論が出るわけではありません。さらに第三者の意見を求めたらともおもいますが、気になる点があります。ご自分の意見に賛同しないと医師の意見を受け入れない方がおられます。その場合は病院を何件受診しても満足しない可能性があります。次の受診の前にはじめのところのCTの結果はなんといわれたか?また、あなたが別の病院に行った理由はなにか?を考えてください。
質問者 25
・高校生の頃に気付いたように思います。舌にざらざらした槽ができている。時には白っぽく粉が付いた様にある。ベロを出すのがはずかしい。痛みはありません。
回答:舌苔というものだと思います.舌の垢のようなものと思っていただければ良いと思います.今は舌ブラシというのがありますので朝・夕2回くらいブラッシングの後に舌表面を2〜3回軽くブラシすると良いと思います.
質問者 26
・歯を白くするのにコマーシャルで「芸能人は歯が命」と歯みがき粉をたくさんつけています。いけませんか?
回答:歯磨き粉の中には研磨剤が入っていますので茶渋など歯の着色を落とすのには歯磨き粉は有効ですがたくさんは必要無いと思います。
歯磨き粉なしで丁寧にブラッシングをしてその後仕上げにブラシに少しは磨き粉をつけて磨くようにされたらよいと思います。
・ がんになるのに何年もかかるのでしたら歯医者さんで見つけていただくのに定期検診はどのくらい行ったらいいですか?
回答:どのくらいの頻度で検診をうければ安心かについては明確な答えはありませんが、くちの前がん病変(白板症など)がなければ、1年に1回程度でよいと思います。ただし白板症などがあれば、その状態に応じてもう少し回数を増やす必要があるかもしれません。
それから、くちの癌の検診は一般の検診では行われませんので、口腔外科を専門とする歯科医院や病院の口腔外科で診察を受けてください。
・舌の大変な写真がいっぱいありました。手術で取り去ったら食事はできますか?
回答:残った舌や周りの状態によって口からどの程度の食事ができるかは異なります。舌のほとんどを切除したときは口からの食事がかなり制限されます。舌の三分の二が残ればほぼ普通の食事が出来ます。
質問者 27
・熱い飲みものを飲むと上アゴの内側に水ぶくれが出来ることがあります。特異なのでしょうか?ちなみにタバコは20年間(3箱/日)吸いましたがその後の20年間は吸っていません。
回答:ご質問の症状、特異的ではありません。熱いものを食べたり、飲んだりしたために出来る口の粘膜の火傷の一症状です。喫煙は止めて20年経っていれば、関係はないと思います。でも、止めて良かったですね。喫煙をしていて、このようなものが出来ると発がん性刺激反応症状として、悪性の腫瘍を出来易くすることになるからです。
質問者 28
・歯磨きの後、うがいをするのはどうでしょうか?
回答:非常に良い習慣だと思います。
質問者 29
・去年の5月ごろから右の舌の奥にちり紙がついている感じで口腔外科に行ったけど何もないとのことで歯の抜けているところに入れ歯をしなさいと言われました。7月と9月に心房細動の発作があるのでアブレーション手術をした。その後、舌が汚れていると思うので食事をしてすぐ歯を磨いて舌を軽く歯ブラシでこすっているのですが何か舌の奥に粉のようなものが付いている感じがします。また少し話しづらい。
回答:舌に何も病気がなくても違和感が出る事があります。心配なら歯科もしくは口腔外科を受診されてみて下さい。舌ブラシという専用のブラシがありますのでそれを御勧めします。
質問者 30
・学校では先生方は職員室での喫煙はしなくなった代わりに屋外で喫煙しています。子供たちの影響は?(その周りに子供たちが休み時間で遊んでいる)
・会社で喫煙室がありますが影響がまったくないのでしょうか?
回答: 喫煙している先生たちの周りの空気は、喫煙の呼気で汚染しています。
その喫煙先生たちの人数と、その周囲からどれくらい離れているかによりますが、間接喫煙の悪影響傘下にいることになり、ぜひ、早く解消して、完全な分煙下、無煙下に生徒たちを遊ばせてください。
会社の建物内に喫煙室があれば、その構造にもよりますが、間接喫煙の問題は残ります。戸の開閉、戸や柱の周りの空隙、空気の流通かにタバコ吸引して人の呼気が、各種濃度で、各種有害物質と共に流れ出てゆき、非喫煙者の吸気に入り、間接喫煙を強制することになります。どれ程有害物質が少なくとも、影響下にいる人の数と、時間によって、相当に悪影響を残します。ぜひ皆で、絶対無煙、禁煙をして、タバコのない全建物を目指してください。
質問者 31
・大野市に口腔外科が少ないので来てもらいたい。
回答:身近に専門医がいると安心と思いますが、残念ながら私どもでは何とも出来ません。
質問者 32
・舌も一日に一回は磨いた方が良いのですか。
回答:舌苔という垢のようなものが付きやすい方がいます。そういうような方は舌ブラシというのが在りますのでそれを使われると良いと思います