〒879-5593
大分県由布市挾間町
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講座紹介


教 育
分子生物学、細胞生物学、生化学および関連分野に関する教育を担当します

医学科 イントロダクトリーII
    チュートリアル・コース2(生化学)および関連のコース
看護科 生化学(マトリックス医学講座と1年毎)
修士課程 基礎生命科学
博士課程 細胞生物学
     
研 究
遺伝子改変動物を用いたDisease Biology
私達は、遺伝子改変マウスやCRISPR/CAS9システムを用いてゲノム遺伝子を操作することにより、分子機能の解明およびその分子が関与する病態メカニズムの研究を行なっています。特に生体の高次システムである免疫系、神経系、代謝系に興味を持って研究しています。マウスをモデルとした研究からヒトの病気の原因究明につなげ、最終的に治療・創薬に発展することを目指して研究しています。
 
1) RNAキナーゼCLP1の機能破綻による神経変性病の発症
CLP1は哺乳類においてはじめて報告されたRNAキナーゼです。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ酵素複合体の構成タンパク質であることからtRNAの成熟化に重要であることが示唆されていましたが、その生体内機能については不明な点が多く残されていました。私達は,生体におけるCLP1 の機能について解析するため,キナーゼドメインの1アミノ酸残基のみを置換したCLP1キナーゼ活性欠損マウスを作製し、解析を行ないました.意外なことに、このマウスは運動ニューロンに おいて軸索の変性および神経筋接合部の変性をともなう神経変性病を発症しました.分子機構の解析から,CLP1はtRNA前駆体におけるイントロンのスプライシング機構に関与すること,また,そのキナーゼ活性の欠失によりtRNA前駆体から生じるRNA断片が細胞に蓄積してp53を過剰に活性化し,もともと酸化ストレスに脆弱な運動ニューロンの細胞死が惹起されることが示唆されました.この研究において,私達はtRNAスプライシングとそのプロセスから生じる細胞ストレス誘導性のsmall RNA,そして,そのsmall RNAと進行性の運動ニューロン細胞死を結ぶ新たな病態機構の可能性を示しました(Hanada T et al., Nature 2013)。
ライフサイエンス新着論文レビューより
 
2) CLP1遺伝子改変マウスの研究が新たな神経変性疾患症候群の発見に貢献
私達は、ヒト神経変性疾患においてもCLP1が関与する病態メカニズムが存在するのではとの仮説を立て、神経遺伝学者Jim Lupski教授との共同研究のもとで神経変性疾患患者におけるCLP1遺伝子変異をスクリーニングしたところ、トルコの限定された地区において、CLP1遺伝子のミスセンス変異を持つ5つの家族を発見しました。両親はヘテロのCLP1突然変異を持ち、ホモのCLP1突然変異を持つ患児はいずれも小頭症および末梢神経障害を持つ神経変性疾患を発症していました。このCLP1突然変異は、140番目のアルギニンがヒスチジンに置換されたものでしたが、このアルギニンは種間で高度に保存されているアミノ酸で機能的にも重要である可能性が示唆されましたが、キナーゼ機能に直接関与するドメインのアミノ酸ではありませんでした。この患者から採取した繊維芽細胞を用いて詳細に解析したところ、この140番目のアルギニンはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ酵素複合体中におけるCLP1の分子間結合に重要であることが判明しました。この変異により、tRNA前駆体のスプライシング機構に異常が生じ、CLP1変異マウス同様にtRNA前駆体断片が細胞内へ蓄積、その結果細胞ストレスを惹起して神経細胞死に至ることが示唆されました(Karaca et al., Cell 2014)。