臨床研究の情報公開

本院でヘリコバクター・ピロリ菌の検査また胃がんの治療を受けられた患者さん・ご家族の皆様へ
 ~平成8年1月から平成28年3月までに検査または内視鏡治療で採取された胃組織の医学研究への使用のお願い~

【研究の目的】

 がんは遺伝子の病気だということが最近、明らかになってきました。遺伝子の病気といっても親から子へ伝わっていく遺伝的な病気ではなく、体細胞の遺伝子(例えば胃の細胞や肺の細胞の遺伝子)が量的あるいは質的に異常を起こし、正常な細胞増殖の制御機構が働かなくなり自律的な増殖をするようになると、がんが出来ると考えられています。

 ヘリコバクター・ピロリ感染症は胃がんとの強い関係が指摘されています。ヘリコバクター・ピロリに感染している人の方が、感染していない人より胃がんの発生率が高いというものです。
ヘリコバクター・ピロリ感染による胃酸を作る胃腺が縮小する萎縮性胃炎が持続すると、胃がん発生が頻度が高くなります。最近はヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することにより胃がん発生が抑制する可能性が指摘されています。しかし、完全には消失せず除菌治療後も一定の割合で胃がんが認められます。そのため、ヘリコバクター・ピロリ感染による胃粘膜異常および発生した胃がんの遺伝子変化を調べることによってヘリコバクター・ピロリと胃がん発症との関連が明らかになり、ひいては胃がん予防につながることが期待されます。
この研究はヘリコバクター・ピロリに感染した胃粘膜において発がんに関連する遺伝子の変化が発生するかどうかを調べるものです。すなわちヘリコバクター・ピロリ感染胃炎・胃がんの患者さんから検査・治療目的で摘出された組織を用いて、遺伝子異常を調べます(DNA、RNA、蛋白質を実験機器を使って調べて、遺伝子の変異の有無や量的異常について調べることにより異常を認める遺伝子を明らかにします)。これによってヘリコバクター・ピロリ感染と胃がん、また除菌後にも生じてくる胃がんとの関係を調べます。対象となる遺伝子は元々正常胃粘膜に存在するものであり、また腫瘍でない組織に軽度の遺伝子異常が存在したとしてもそれが胃がんである、また近い将来胃がんになる確率が高いことを示すものではありません。しかし、このような軽度の遺伝子の異常が積み重なることによりがんが発生する可能性があります。またヘリコバクター・ピロリに対する炎症反応にも個人差があることが考えられ、これにはお酒に強い人、弱い人がでるのと同じく遺伝子にわずかな違いがあることが考慮されます。このような感染に対する反応の違いを示す遺伝子の違いを調査していきます。
この研究によりヘリコバクター・ピロリ感染症と胃がん発生との関係を明らかにし、胃がんの早期発見・予防に役立てることを目標としています。

【研究の方法】

【使用させていただく組織等について】
 本院におきまして、既にヘリコバクター・ピロリ感染診断のために採取された胃組織、および胃がんの治療を受けられた患者さんのがん組織(試料)を医学研究へ応用させていただきたいと思います。その際、がん組織を調べた結果と診療情報(例えば治療効果がどうであったかなど)との関連性を調べるために、患者さんの診療記録(カルテやレントゲン写真など)を調べさせていただくこともあります。なお患者さんの組織(試料)及び診療記録(カルテ)を使用させていただきますことは本学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認された後に行います。また、患者さんの試料および診療情報は、国の定めた「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従い、匿名化したうえで管理しますので、患者さんのプライバシーは厳密に守られます。当然のことながら、個人情報保護法などの法律を遵守いたします。

【使用させていただく組織(試料)の保存等について】
がん組織(試料)の保存は10年間(倫理委員会承認日から平成38年2月28日まで)を基本としており、研究終了後は、がん組織(試料)を焼却処分します。ただし、研究の進展によってさらなる研究の必要性が生じた場合は5年間を超えて保存させていただきます。

【患者さんの費用負担等について】
本研究を実施するに当たって、患者さんの費用負担はありません。また、本研究の成果が将来胃がん診断法などの開発につながり、利益が生まれる可能性がありますが、万一、利益が生まれた場合、患者さんにはそれを請求することはできません。

【研究資金】
 本研究においては,公的な資金である大分大学医学部消化器内科学講座の基盤研究費および寄附金を用いて研究が行われ,患者さんの費用負担はありません。

【利益相反について】
 この研究は,上記の公的な資金を用いて行われ,特定の企業からの資金は一切用いません。「利益相反」とは,研究成果に影響するような利害関係を指し,金銭および個人の関係を含みますが,本研究ではこの「利益相反(資金提供者の意向が研究に影響すること)は発生しません。本研究に関わる全ての者が、本学利益相反マネジメントポリシーに抵触する利益相反を有しません。

【研究の参加等について】
本研究へ胃の組織(試料)を提供するかしないかは患者さんご自身の自由です。従いまして、本研究に胃の組織(試料)を使用してほしくない場合は、遠慮なくお知らせ下さい。その場合は、患者さんの胃の組織(試料)は研究対象から除外いたします。また、ご協力いただけない場合でも、患者さんの不利益になることは一切ありません。なお、これらの研究成果は学術論文として発表することになりますが、発表後に参加拒否を表明された場合、すでに発表した論文を取り下げることはいたしません。
患者さんの胃の組織を使用してほしくない場合、その他、本研究に関して質問などがありましたら、主治医または以下の研究責任者までお申し出下さい。

【研究責任者】 

村上和成

【問い合わせ先】

〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1丁目1番地
       大分大学医学部 消化器内科学講座

電話: 097-586-6193