1.研究目標

 (1)中枢神経作用薬の慢性投与による各種神経伝達物質の受容体の量的・質的変化の検討(主にセロ

   トニン、アドレナリン、アセチルコリン受容体)

 (2)各種疾患におけるフリーラジカルの関与と抗酸化物質の開発(フリーラジカルによる病態動物に

   対する漢方薬の効果)

 (3)中枢神経系を調節する内因性因子の探索

 (4)漢方薬の薬物動態学(漢方薬の効果の評価法として血清薬理学を検討)

 (5)老化と寿命(老齢動物の寿命に対する長寿薬の効果)

2.現状の点検

 (1)代表原著論文10編

Obata T, Yamanaka Y: Cardiac microdialysis of salicylic acid ・OH  generation on non-enzymatic oxidation by norepinephrine in rat heart, Biochem  Pharmacol, 53, 1375-1378, 1997

(IF:2.755)

Wada Y, Egashira T, Yamanaka Y and Isono M: Catecholamine levels in the cerebrospinal fluid of conscious rats after transplantation of the adrenal medulla into the cisterna magna, Biogenic Amines 13, 29-37, 1997 

(IF:0.356)

Sato T, Obata T, Yamanaka Y, Arita M: Effects of lysophosphatidylcholine  on  the production of interstitial adenosine via protein kinase C-mediated activation of ecto-5'-nucleotidase in rat hearts, Br J Pharmacol, 125, 493-498, 1998  

(IF:3.722)

Wada Y, Egashira T, Takayama F, Yamanaka Y, Takada K, Takeda H, Matsumiya T: Variation of monoamines and their metabolite contents in the cerebrospinal fluid of conscious rats, Jpn. J. Pharmacol. 78, 237-240, 1998 

(IF:1.210)

Egashira T, Takayama F, Yamanaka Y: Monitoring of radical scavenging activity of peroral administration of Kampo medicine Sho-saiko-to in rats, Jpn. J. Pharmacol. 80, 379-382, 1999  

(IF:1.210)

Egashira T, Takayama F, Yamanaka Y: The inhibition of monoamine oxidase activity by various antidepressants : Differences found in various mammalian species, Jpn. J. Pharmacol. 81,  115-121,  1999 

(IF:1.210)

Obata T, Yamanaka Y: Tyramine produces interstitial adenosine-mediated  activation of ecto-5'-nucleotidase in rat heart in vivo, Eur J Pharmacol, 374, 25-31, 1999

(IF:2.047)

Egashira T, Takayama F, Sakai K, Yamanaka Y: Styrene inhibits monoamine oxidase B in monkey brain mitochondria, Toxicology Letters, 117, 115-119, 2000 

(IF:0.773)

Obata T, Yamanaka Y: Protective effect of histidine on potassium chloride depolarization enhances 1-methyl-4-phenylpyridinium ion-induced hydroxyl radical generation in the rat striatum, Life Sci, 68, 689-697, 2000 

(IF:1.774)

Obata T, Yamanaka Y: Protective effect of fluvastatin, a new inhibitor of 3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase, on MPP+-induced hydroxyl radical  in the rat striatum, Brain Res, 860, 166-169, 2000 

(IF:2.302)

 (2)講座で出版した原著論文数とインパクトファクター合計

   平成9年度(9,14.485)

   平成10年度(8,12.442)

     平成11年度(16,18.187)

   平成12年度(17,26.195)

 (3)平成9〜12年度科学研究費補助金及び民間の公募製による研究補助金等の獲得状況

   期間:平成10〜11年度

   研究者名:小畑俊男

   課題:一酸化窒素(NO)の心筋保護にはアデノシン産生増加は関与するか

3.現状の評価

(1)フリーラジカルの生体内での役割

 フリーラジカルの性質、動態を検討するために、種々の薬物によるフリーラジカルの消去作用および産生抑制作用を検討したが、検討した薬物のうち漢方薬にその作用が強いことを認めた。そこで、漢方薬の薬効の一つにフリーラジカル抑制作用があることを明らかにした。また、ストレスとフリーラジカルとの関りについて、モデル動物で検討したところ、水浸拘束ストレスモデルにおいて、フリーラジカルが発生することをESR装置を用いて確認した。

(2)生体内の未知の生理活性物質の検索

 ヒト脳脊髄液中にセロトニントランスポーターを調節する物質が存在し、これがセロトニンの取り込みを調節して、脳内のセロトニン代謝回転機構ひいては精神状態をコントロールしているものと推測している。この内因性のセロトニントランスポーターを調節する物質は脳脊髄液中に存在するペプタイドであり、分子量が5万から3万の約3種類が確認され、現在、分離・精製・同定を試みている。

(3)老化のメカニズム

 老化のメカニズムに関する研究では、我々の教室では老齢ラットを実験材料としている。老齢ラットは種々の成人病の基礎となる情報を持っており、老化および老年期における薬物の効果を評価するには格好のモデルである。現在は寿命に関する研究を進めており、特に漢方薬のうち人参養栄湯に寿命を延長するい効果(ラットの寿命は約2年であるが、人参養栄湯投与ラットでは2.5年となる)を認めた。長寿薬や予防薬としての漢方薬の効果を得ている。

4.将来の改善改革に向けた方策

 (1)フリーラジカルの生体内での役割

 現在おこなっている、病態モデル(ストレスモデル)や抗酸化物質の動態やラジカル消去能を検討し、酸化ストレスのプロファイルを構築することを将来の目標としている。また、L - バンドESR装置に小動物(マウス、ラット)をまるごとセットし、体内のラジカルを検出し、その発生原因や位置を求める方法を確立したい。この装置および方法は将来的には、臨床応用も充分可能と考えている。

 (2)生体内の未知の生理活性物質の検索

 早急に本物質の同定の必要性を痛感している。脳脊髄液中に存在する事から、脳脊髄液中の本物質の量的変動がそのまま脳内の量的変動を反映し、充分に感情障害の指標として利用できると思われる。また、本物質の構造解析により、副作用がみられない新規感情障害治療薬の開発も可能であり、感情障害のコントロールも夢ではない。

 (3)老化のメカニズム

 漢方薬のうち人参養栄湯に寿命を延長する効果が認められたので、この作用機序を解明し、寿命延長に関っている生薬および物質を同定したい。また、その他の漢方薬に同様の作用を示すものがあるかを検討したい。

薬理学