1.研究目標

 (1)難治性肺疾患(肺線維症、肉芽腫性疾患、難治性肺感染症)の病態の分子生物学的解析と治療の

   研究

 (2)睡眠時無呼吸症候群と喘息の臨床的(診断と治療)研究

 (3)難治性神経・筋疾患の病態の分子生物学的解析と治療の研究

 (4)老人性痴呆・高齢者神経疾患の発症関連要因の疫学的研究

 (5)難治性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、自己免疫性肝疾患)の病態と治療の研究

2.現状の点検

 (1)代表原著論文10編

Kumamoto T,Ueyama H,Sugihara R,Koinai E,Goll D.E,Tsuda T:Calpain and cathepsins in the skeletal muscle of the inflammation myopathies. Eur Neurol 37:176-181,1997

IF:1.379)

Kumamoto T,Ueyama H,Sugihara R,Shigenaga T,Tsuda T:Elevated soluble intercellular adhesion molecules-1 in inflammatory myopathy. Acta Neurlo Scand 95:34-37,1997  

IF:1.325)

Ueyama H,Kumamoto T,Fujimoto S,Murakami T,Tsuda T:Expression of three calpain isoform genes in human skeletal muscles. J Nerol Sci 155:163-169,1998  

IF:1.685)

Sugisaki K,Tsuda T,Kumamoto T,Akizuki S:Clinicopathological characteristics of the lungs of the patients with human T cell lymphotropic virus type 1-associated myelopathy.  Am J Trop Med Hyg 58:721-725,1998

IF:1.932)

Kumamoto T,Abe T,Nagao S,Ueyama H,Tsuda T:Immunohistochemical study of clathlin in distal myopathy with rimmed vacuoles. Acta Neuropathol 571-575,1998 

IF:2.402 )

Nagao S,Kumamoto T,Masuda T,Ueyama H,Toyosihima I,Tsuda T:Tau expression in denervated rat muscles. Muscle&Nerve 22:61-70,1999 

IF:1.898)

Mizuki M,Koatsu H,Akiyama Y,Iwane S,Tsuda T:Inhibition of eosinophil activation in bronchoalveolar lavage fluid from atopic asthmatics by Y-24180, an antagonisto to plateletactivating factor. Life Sceince65:2031-2039, 1999

IF:1.774)

Ando M,Miyazaki E,Fumami T,Kumamoto T,Tsuda T:Interleukin-4-produching cells in idiopathic pulmonary fibrosis:An immunohistochemical study.  Respirology 4:383-399,1999

IF:0)

Ueyaa H,Kumamoto T,Nagao S,Masuda T,Sugihara R,Fujimoto S,Tsuda T:A novel mutation of the McLeod syndrome gene in a Japanese family. J Neurol Sci 176:151-154,2000

IF:1.685)

Sawabe T,Shiokawa S,Sugisaki K,Tsuda T,Yamamoto K:Acumulation of common clonal T cells in multiple lesions of sarcoidosis. Molecular Med 6:793-802, 2000 

IF:4.155)

 (2)原著論文数およびインパクトファクター合計

   平成 9年度(19,18.834)

   平成10年度(11,4.599)

   平成11年度(23,16.808)

   平成12年度(17,11.499)

 (3)科学研究費補助金及び民間の公募制による研究補助金等の獲得状況

   文部省(文部科学省)科学研究費補助金

   平成8〜9年度

   熊本俊秀 基盤研究(c)

   「遠位型ミオパチー骨格筋における疾患特異遺伝子の解明」

   平成10〜11年度

   三宮邦裕 基盤研究(c)

   「地域集団を対象とした神経疾患スクリーニングのための問診票の開発に関する研究」

   平成11〜12年度

   熊本俊秀 基盤研究(c)

   「遠位型ミオパチ−の発症機構における筋ライソゾーム機能の研究」

   平成12〜13年度

   上山秀嗣  基盤研究(c)

   「McLeod症候群における神経筋病変の発症機序」

   平成12〜13年度

   三宮邦裕 基盤研究(c)

   「地域集団を対象とした神経疾患抽出のための効率的検診システムの確立に関する研究」

   厚生省(厚生労働省)科学研究費補助金

   平成9年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 三宮邦裕

   「スモンに関する調査研究」

   平成9年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 熊本俊秀

   「特定疾患患者のQOL向上に関する研究」

   平成10年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 津田富康

   「び慢性肺疾患に関する調査研究、サルコイドーシス治療指針策定」

   平成10年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 三宮邦裕

   「スモンに関する調査研究」

   平成10年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 熊本俊秀

   「特定疾患患者のQOL向上に関する研究」

   平成11年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 津田富康

   「び慢性肺疾患に関する調査研究、サルコイドーシス治療指針策定」

   平成11年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 三宮邦裕

   「スモンに関する調査研究」

   平成11年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 熊本俊秀

   「特定疾患患者のQOL向上に関する研究」

   平成12年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 津田富康

   「び慢性肺疾患に関する調査研究、サルコイドーシス治療指針策定」

   平成12年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 三宮邦裕

   「スモンに関する調査研究」

   平成12年度

   厚生省特定疾患調査研究委託費 熊本俊秀

   「特定疾患患者のQOL向上に関する研究」

   熊本県研究委託費

   平成9年度

   熊本県研究委託費  津田富康、熊本俊秀

   「水俣病に関する調査研究」

   平成10年度

   熊本県研究委託費  津田富康、熊本俊秀

   「水俣病に関する調査研究」

   平成11年度

   熊本県研究委託費  津田富康、熊本俊秀

   「水俣病に関する調査研究」

   平成12年度

   熊本県研究委託費  津田富康、熊本俊秀

   「水俣病に関する調査研究」

   東洋信託銀行公益信託

   平成9年度サルコイドーシス研究基金 津田富康

   サルコイドーシスの病態と治療に関する研究

   東京三菱製薬(株)受託研究 平成12年度 熊本俊秀

   実験的クロロキン誘発ミオパチ−の発症に対するBDA-410の効果

3.現状の評価

 (1)研究目標(1),(2)について

     目    的

       難治性肺疾患は多くは原因不明で且つその病態の解明も十分ではない。そこで今日技術開

       発の顕著な分子生物学的手法を使い,遺伝子レベルまたはサイトカインレベルから病態の

       解析を行った。治療研究としてはサルコイドーシス学会と共同し,日本におけるサルコイ

       ドーシス治療指針(班長:津田富康)を作成中で本年度に発表される予定である。肺線維

       症についても全国レベルの治験を行っている。

     目標の達成度

       結果は難治性肺疾患の病巣ではTh-2が優位な環境が形成されていること。肉芽腫性疾患で

       はTh-1とTh-2の分布が肉芽腫の内外で異なること、肺線維症では繊維化の強い部位に各

       種のIL-4分泌が優位に分布していることを突き止めている。

 (2)研究目標(3)について

     目    的

       難治性である神経筋疾患のうち遠位型ミオパチー、多発性筋炎、筋ジストロフィー、急性

       四肢麻痺性ミオパチーの成因と病態解明および治療法の開発を分子生物学的手法を用いて

       行うと共に、筋の崩壊機構をプロテアーゼの立場から検討した。 また、各種神経筋疾患の

       原因遺伝子解析を行い、その異常を解明した。

     目的の達成度

       ヒト遠位型ミオパチーとその実験モデルであるクロロキン (CQ)ミオパチーの骨格筋を用

       い、本疾患の発症機構にリソゾームの代謝異常が深く関与していることを明らかにした。

       また、治療法の開発については筋の崩壊機構にCa依存性プロテアーゼの関与も示唆された

       ことから、三菱東京化学との共同研究でCQ投与ラットにおけるそのインヒビター

       (BDA-410)の効果を研究している。ヒト多発性筋炎およびそのモデルである実験的筋炎を作

       成し、炎症性ミオパチーにおけるユビキチン・プロテアゾ−ムおよび細胞接着分子の関与

       および炎症局所にしばしばみられる好酸球の臨床病理学的意義を明らかにし、顆粒蛋白が

       筋収縮蛋白を分解することを見い出した。遠位型ミオパチー、筋ジストロフィー、炎症性

       ミオパチー、急性四肢麻痺性ミオパチーにおける筋の崩壊機構には、疾患により主体とな

       るものが異なるが、リソソーム系、非リソソーム系のカルパインおよびユビキチン・プロ

       テアゾ−ム系の細胞内蛋白分解系が複雑に関与することを明らかにした。さらに遺伝子解

       析によりMcLeod症候群、肢体型筋ジストロフィー2B型の新しい変異家系を発見した。こ

       れらの成果はすでに論文として発表または投稿中である。

 (3)研究目標(4)について

     目    的

       高齢化に伴い「惚け、寝たきり」という言葉に代表される老年者が増加することが予測さ

       れるが、その実態と発症関連要因を熊本県御船町の60才以上の高齢者を対象に全数把握に

       基づく疫学的手法を用い明らかにすると共に、住民検診におけるそうした患者の早期発見

       システムの開発を試みた。

     目標の達成度

       対象地区在住高齢者1270人(検診率83%)についてのデータ・ベースを作成し、ライフス

       タイル、神経症状、神経徴候、ADL状況、認知機能などの実態を明らかにし、痴呆予備群

       ともいえるcognitively impairment but notdemented (CIND)の実態とその臨床的特徴を

       明らかにした。これらの成果はすでに論文または著書として発表した。また、高齢者に多

       い多発性ラクナ梗塞に注目し、住民検診におけるその早期発見システムを開発中である。

 (4)研究目標(5)について

     目    的

       現在上記の難治性肝疾患の正確な病理学的評価と検査データの解析を行っている。今後は

       分子生物学的解析を加えてその難治性の機序を解析する予定である。

     目標の達成度

       ようやく基本的な組織学的評価が出来るようになったので,今後は難治性要因の解析を行

       う予定である。

4.将来の改善改革に向けた方策

 難治性疾患は人口の高齢化とともに益々増加するものと思われる。またその病態は複雑で今日十分には理解されていない。しかし、正しい予防と治療を推進するためにはこの複雑な病態を分子生物学的に明らかにすることは必須条件である。今後より詳細に病態を検討把握し新しい難治性疾患の治療の方策を探りたいと考えている。

内科学第3