4 大学院医学系研究科(修士課程)教育の達成状況

 (1)学生の到達度

 本課程は基礎看護学、臨床看護学、地域・老年看護学の3分野より編成されている。教育課程は共通科目および専門科目より成り、講義・演習、特別研究を通して21世紀の看護実践、教育、研究分野において優れたリーダーシップを発揮できる看護者の育成を目指している。主な研究は、看護科学・健康科学の基礎的研究、母子の健康と障害への看護学的アプローチ、成人の健康と障害への看護学的アプローチ、老年者の健康と障害への看護学的アプローチ、すべての人を対象とした地域看護学的アプローチである。

 本課程は、主任指導教員およびその他の教員の複数体制により、教員の専門性と学生の個性を生かしながらそれぞれの授業科目により指導を行っている。主任指導教員及びその他の指導教員は、1年〜2年次を通して学生の研究能力を育成するよう指導している。また2年次の学生に対しては、所属する領域の特別研究を通して修士論文の作成にかかわる研究指導を行っている。研究は、実験、質的・量的研究、実証研究、医療・看護学における理論的研究等、その主題と方法は多岐にわたっており、各学生の研究テーマに沿った研究指導が為されている。その中で学生は看護学的関心を研究的主題として取り上げ、解明していくという研究的態度を習得することができた。修士論文(研究)の結果は、公開発表の場でプレゼンテーションを行っている。参加者は、付属病院の看護者、他施設の看護者・教育者、次年度の入学希望者、また本学学部生が参加しており、多領域での意見交流が為される他、学生相互の論文クリティークの場として機能している。さらに研究結果については、看護学系・医学系の学会発表および論文投稿等で発表し、原著論文へと発展するよう意欲的に取り組むことができた。

 本課程では、看護学を学ぶ機会を拡大するために受験資格者認定の門戸を拡げている。そのため、入学者の看護経験や社会的役割、年齢等、多様化している。看護の臨床経験はあっても看護学としての学習が不足している学生と、基本的な学習は終えているが臨床経験のない学生が混在しており、学生の状況に応じて教育内容を設定し運営している。 

 学生のレディネスの多様化は、授業での議論を深化させ、視野の拡大に大きく貢献している。その一方で、各科目毎の特論の教材選択や、演習時の教育方法の困難性もある。そのため教育方法としては、看護臨床の場に参画し、その体験をもとに看護の実際と基本的理論を議論したり、個々の学生に対応した看護現象の捉え方、さらには個人の研究的課題へと発展できるような授業展開を行っている。今後も看護学研究・教育に力点を置きながら看護学の内容を充実させるとともに、個々の学生の特性を生かした研究指導、教育内容を展開していきたいと考えている。

 現在、学生の国際レベルでの学会発表活動が始まっている。今後の課題として、それらの発表内容を原著論文としてまとめていくことがあげられる。修士修了生の就職先は九州はじめ全国的な規模となるので、継続した論文指導が難しいという面がある。したがって、2年間の中で原著論文として完成するように、指導方法を検討していく必要がある。

 

 (2)卒業生による調査

 進路調査では、看護教育に携わる職業選択(約8割)を行い現在も活躍していることがわかった。本修士課程が看護研究者・教育者・実践者・管理者として優れたリーダーシップを発揮できる基盤作りができるよう、本大学院における教育・研究の人的・物的環境の調整等、一層の努力が必要である。

 看護は実践の学問である。そのため、本学の修士課程での教育目的は、看護研究の方法論的獲得ばかりでなく、「看護学研究」を通した専門職(専門職の教育者)の自覚、および人間的成熟も重視している。大学院生にとって、大学院で出会う指導教官、大学の各担当教官は、ロールモデルになり得る存在である。今後、各教員の教育者としての自覚を具体的に示すとともに、ファカルティディベロップメント(以下FD)やスタッフディベロップメント(SD)、大学院生のティーチングアシスタント教育と関連させながら、本学の大学院教育を捉えていきたいと考えている。

 そのために、看護学科では平成13年度よりFD部会を立ち上げ、学習会の企画・運営などの実働を開始する予定である。→詳細は、評価項目Y.教育の質の向上及び改善のためのシステム2−(2)教職員の教育能力開発頁を参照。