3.看護学科における支援の現状・評価・改善の方策等

(1)良好な学習環境の提供(工夫と特徴)

 1)情報教育施設の環境整備状況の現状

 学生課,医学情報センター等との連携のもと,4階自己学習室の管理運営を行い、看護学科内の情報機器及び情報ネットワークに関して看護学科ホームページの管理や学内情報システムの活動に関連した事項の検討などマネージメントを行っている。看護学科におけるパソコン機器やネットワークシステム(学内LAN)に関しては自己学習室にパソコン37台プリンター5台、カラープリンター1台、ビデオ4台、モニター4台を設置を設置している。学生に自己学習室の利用(24時間使用可能)について医学情報センターと連携してとくに新入生を対象に入退館システム、マナー、トラブル時の対応、パソコンの使用方法などについてオリエンテーションを行っている。また、学生のビデオ学習ができるように、ビデオソフトの更新と管理を行っている。

 今後の課題は、自己学習室の使用に関するオリエンテーションの充実である。また授業で使用する教材ソフト等を、常時学生が活用するためのシステムを検討している。

(2)臨床教育環境(大学附属病院等)の整備状況

<実習指導者講習会の開催>

 臨床指導者講習会(附属病院病棟指導者対象)を、平成7年度より年一回5年間開催した。5年間の講習会の結果、各病棟単位に2名程度の講習修了者が配置されてきたことから毎年定例の企画から、不定期の企画に変更された。また、学科看護教育科目関連への科目履修等が可能となるよう発展的な調整をしている。(次頁表1・2)

<実習連絡会の開催>

 附属病院看護部(部長含む2名)と学科学務委員と部会メンバーで構成された公式会議を毎年1回開催し、実習の年間計画調整、実習に関する組織的解決に向けての調整実施している。実習における具体的な調整は各領域の教員が実施している。

<実習修了後の実習報告会の開催>

 年2回開催している。教員の出席率は毎回80%程度あり、学習到達状況や実習中の学生の学習上の問題や指導方法の意見交換などを行い、反省と問題解決のための話し合いを十分に行い、翌年の実習をより良いものにするための資料作成を行っている。

表1 実習部会会議内容

                          
年度 開催
回数
検 討 内 容

9年度

6回

(平0/1/19
発足)

1.看護学実習の効果的な遂行に向けての課題を検討し、整理する。
 1)看護学実習の教育内容に関して
 2)看護学実習の推進・運営に関して
2.実習を考える会の開催
3.平成10年度看護学実習検討委員会への引継ぎ

10年度

23回

1.平成10年度臨床実習指導者研修会の開催
2.平成10年度実習説明会の開催
3.臨床実習連絡会の開催
4.看護学実習要項共通編の作成
5.実習における看護技術到達状況に関する調査の実施
6.附属病院におけるカンファレンスルーム整備拡充
7.実習事故に関する保険の学習会の開催

11年度

12回

1.実習に関する事務手続きの明確化
2.実習事故に関する連絡体制の明確化
3.看護学実習要項共通編の製本に向けての検討
4.実習における看護技術到達状況に関する調査のまとめ及び実習報告会の開催
5.4年次実習ローテーションの学生配置及びオリエンテーションの日程調整、実習経費の取りまとめ
6.臨床実習連絡会の開催
7.臨床実習指導者研修会の継続についての検討

12年度

10回

1.領域をこえた実習に関する課題についての調整・検討
2.教育要項(看護学実習要項共通編)、実習要項の評価と見直し
3.実習報告会の開催
4.4年次実習ローテーションの学生配置
5.臨床実習連絡会の開催
6.新カリキュラムの実習に関する情報交換会

表2 看護学実習要項<共通編>の作成

                     
年  度 検  討  内  容

平成10年度

・平成9年度看護学実習要項の改訂作業(用語や書式の整理・統一、針刺し事故の対処方法の確認)→4期生向看護学実習要項の作成・配布(平.10、6月)

平成11年度

・4期生向看護学実習要項の改訂作業(実習事故連絡体制について)
・5期生向看護学実習要項の作成・配布(4期生には差し替えを配布)
・平成12年度の共通編は、教育要項に掲載することを決定

平成12年度

・教育要項に掲載したことについての評価・見直し
・共通編は別冊印刷にし、4年間使用することを決定
・内容の改訂作業(新・旧カリキュラムの一覧、実習事故予防のための具体的な指針)、業者発注、校正及び配布

(3)経済的支援のための方策

 日本育英会の奨学金の推薦、授業料免除など必要な場合には本人の申し出に応じて主にチュータの教員が対応している。学生課では家庭教師などの紹介も行っている。

(4)進路指導や就職支援のための方策及び学習・生活ガイダンスの実施状況

<就職活動に関する支援>

 就職活動は、基本的に学生が自主的に行うものである。しかし学生が相談にきた場合,教員は就職先の選択専門領域に関する情報提供や就職試験の留意点など、就職活動全般の支援を行っている。

 就職に関する情報は、随時求人資料を提示(常時閲覧できる部屋を設けている)したり、進路指導室を開設し、相談に応じている。

 また、保健婦志望の場合は、5月くらいから就職活動を要することや、問い合わせ先等の指導を行っている。地域看護学の教員との連携をはかりながら支援体制を整えている。

 学科の就職支援は,学生の主体性を重視し、要望があったときに即応できるよう体制を整えている。就職希望がない学生や相談が全くない場合は支援に限界があるので、積極的に相談することを伝えている。相談は,就職先の選択,試験にかかわること,内定後の対応(複数合格の場合や他施設の試験結果待ちの依頼方法など)など何度でも必要に応じて相談に応じられるようにしている。学生にとっては、複数の教員から意見を聞くことも重要である。各教員(チュータ・専門領域の教員・研究指導の教員・就職担当教員など)が学生に行ったアドバイスは学内のコンピューターソフトを使って管理している。尚、教員以外はログインできないプロテクトをかけてプライパシーの保護をしている。それらを活用しながら各学生に対する就職支援状況を把握し、より適切な支援を実施している。

<新入生ガイダンスの実施> 

 看護学を学ぶために必要な基礎・専門基礎科目と、専門科目について学科目の構成を説明し、4年間のカリキュラム全体をイメージできるように配慮している。教員組織の構成、学生と教員のかかわりの実際例などを紹介し、これまでの学生同様に気軽にかかわりをもつように勧める一方で、そのために必要なマナーについて確認しながら円滑な関係を築きたいと投げかけている。

 高校までの学び方と、大学での学び方の相違について、教員が感じていることを伝え、主体的に学ぶ姿勢と、広く様々な体験を学習の糧にすることなど勧めている。

<合宿研修>

 看護学科では,新入生合宿研修と在来生合宿研修を行っている。

 『新入生合宿研修』は、1年次生を対象に,1泊2日の合宿研修で,昨年度から医学科の1年次生と合同で実施している。学生同士の親睦を深め,コミュニケーションの促進を図ることを第一の目的としている。この目的達成のために、グループワークやレクリエーションを計画し、その活動毎にグループの編成を変え,学生ができるだけ多くの学生と交流がもてるように計画している。また学科の先輩からの講話をプログラムに織り込んで,これから自分達が学んでいく学問に対して目的意識を持って取り組めるようにしている。

 保健管理センターからの健康教育を組み入れ、学生生活や学習活動をしていく中で注意を必要とする病気やその対処について、学生が意識し、自己管理を行い、適切な対処行動が取れるように導くプログラムを組んでいる。グループワークやレクリエーションで引率の教員と行動を共にしたり意見交換することによって、教員と学生が相互にオープンな関係が取れるように関わりをもっている。

 以上のように,学生が新しい学習環境に円滑に適応して,学習意欲を持って学生生活が送れるように新入生合宿を実施している。また、学生のアンケートからは、「医学科と合同で行なうこと」や「学生のグループ編成やプログラムが工夫されていたので、入学当初の不安感や孤立感は軽減された」こと、また、「多くの学生と親睦を深めることができた」「コミュニケーションが取れた」ことさらに、看護学科に入学し「学習目標を改めて自覚できた」などの声があり、合宿の有効性が判った。

 3年次生と3年次に編入した学生を対象にした『在来生合宿』では、在籍する3年生と3年次に編入した学生の交流を図り、コミュニケーションを深め、相互理解を図ることを第一の目的としている。さらに学生相互に今までに受けた看護教育や学生生活について持っている疑問や不安、意見について意見交換をすることで、看護学についての理解を深め,学習目標、学生生活の意義を再確認することを目的としている。合宿プログラムの作成や運営は学生が主体的に決定・実施している。教員は、学生が主体的に行動できるようかかわり,合宿の目標が達成するよう助言を行っている。

 以上のように、在学生と編入生との交流を合宿形式で行うことで、学生間や学生と教員間の交流を深めることができた。学生の評価から合宿の目的・目標はある程度達成され、学習効果が見られている。しかし、学生にプログラム作成や運営を主体的に行うことがよい反面,プログラムやディスカッションのテーマに関してマンネリ化したような状況も伺える。その点をどのように関わっていくかが課題である。

<生活相談>

 看護学科は、講師以上の教員が、在学生のチュータとして個々の学生に対する相談や指導に応じている。特に、休学・進路変更・復学等にあたっては、その理由や事情について相談に応じ、具体的な対応の助言をしている。また、科目が不合格となった場合、今後の学習計画について話し合っている。進路変更のケースにおいては、本人と家族と話し合い、本人の希望に添うよう支援し、また家族との関係についての相談をうけることもある。学生は、教員に相談しにくいことを、先輩学生に相談することもある。チュータは、自分の担当学生との相互理解だけではなく、担当学生間の交流を図れるよう、チューターコンパやお茶会、昼食会等を設けている。最近はメールによる相談も増え、チュータは、様々な形で学生に対応している。また。担当学生以外の者も、来談することが多い。

<教員のオフィスアワー>

 学生が教官に相談などしやすいように、各教官は曜日と時間を指定したオフイスアワーを設けて対応している。実際にこの時間帯に訪れる学生は少ない。学生が訪れた際にはなるべく面談を行い。時間が取れない場合には、あらためて予約を取って対応している。学務にかかわることは学務委員あるいは学生課担当を紹介し、問題解決にあたっている。

 また、編入生との交流として、大学の状況がつかめた5月頃に学科長を中心に教官が集まり昼食会を設ける、など学生−教員間の交流の場を設けている。

<メンタルヘルスケアの対応>

 保健管理センターでは、学生の健康管理に対して、つねに相談に応じる体制が整っている。内科医、精神科医、婦人科医に相談でき、身体的疾患のみならずカウンセラーによる心理的なカウンセリングも受けられるようにしている。メンタルヘルスケアでは、保健管理センターや保護者(家族)との連絡などを要した学生がありそれぞれに面接や電話で相談に応じてきている。

 

(5)ゆとりや課外活動の状況 

<課外活動>

 学生の課外活動に関して、医学科と看護学科でクラブ活動を共有しているが、看護学科の教官もテニス、剣道などのクラブの指導者として活躍している。

<ボランティア活動>

 教員は学生にボランティア募集の案内を掲示し呼びかけ、参加希望の学生にオリエンテーションを行っている。また、教員もボランティアとして参加し、学生とスタッフやメンバーの関係調整を行い、学生が対象を理解し、看護の視点が育つように関わっている。

『大分DARC(Drug Addiction Rehabilitation center)食事会』

 大分DARCのメンバーとともに夕食を共にし、その後DARCのミーティングに参加している。学生は、薬物依存やDARCについて2年次後期の授業で学んでいる。この参加により学生は、対象を依存症者としてだけではなく、生活者としての理解を深めている。

『大分アディクションフォーラム』

 学生はアディクションフォーラムの企画・運営等に関わるだけでなく、依存症者の体験談やモデルミーティングに参加することで、対象の理解や自分自身の振り返りができていた。

『九州・沖縄地区AA(Alcoholics Anonymous)ラウンドアップ』『大分地区AAパブリックミーティング』

 一般参加の呼びかけなど運営面の協力を行っている。

『こころの健康フェスティバル』

 精神保健福祉センターが主催している地域交流の催しを通して、デイケアに通っている対象の理解とスタッフの役割等を考える機会になっている。

『精神保健福祉センターデイケア合宿』

 昼夜とおして対象とかかわり、普段のデイケアでは関わることのできない対象の様子(夜間なかなか寝付けない、食事、入浴等)を知るだけでなく、看護援助を通して対象を理解する機会となっている。また合宿を通してスタッフの関わりや役割を学んでいる。

『幼稚園の夏季キャンプ』

 健康な小児の発達、小児との関わり方を学ぶ機会になっている。

『附属病院・小児病棟の七夕会・クリスマス会』『附属病院・病棟運動会』

 学生は、入院中の子どもたちやその家族と開催の準備段階からかかわっている。子どもの入院生活(療養生活)への影響を踏まえながら子どもたちと接することを学ぶ機会にしている。また、安全面などへの配慮を行い、ナースの指導を受けながら飾り付け等の工夫をしている。

 他に、『脳性麻痺児・者の療養キャンプ』『ダウン症患児のキャンプ』『不登校児のメンタルフレンド』『介護老人保健施設等におけるボランティア活動』『小児糖尿病サマーキャンプ』『車椅子マラソン大会』『24時間マラソンスポーツ大会』『24時間車椅子バスケットボール大会』への協力など、学生は教員と共に積極的に企画に参加し、対象の理解・看護が行われている場の理解を深めている。