福井医科大学副学長(教育等担当)  岡田謙一郎

 まず大学周辺を含め、大学内外の清掃が行き届き清潔感に溢れていることに気づく。これは医療・医育機関として大切なことである。またキャンパス内にも緊張感と清潔感が漂っており、地域医療の中核を担う医科大学の意気込みが随所に見られた。すでに開学から四半世紀を経過され、もはや「新設医大」から脱却すべき時が到来した。わが国の受験状況にも係ることで達成にはさまざまな障害はあろうが、真に地域に根を張った医科大学であるためにも、県下からの学生が現状の2030%からさらに増え、より多くの卒業生が貴学あるいは県下で活躍するよう、一層魅力ある大学作りに努めていただきたい。

 以下、見分した具体的事項について順不同ながら感想を述べる。

1)テュートリアル教育棟の新設と諸備品の整備、クリニカル・スキル・ラボラトリーの新設、クリニカル・クラークシップの導入など、医学教育に力を入れ、学生の就学に対して細かい配慮がされていることを実感する。

2)このような配慮は職員や患者さんにも向けられている努力が察せられる。たとえば、見学した実験実習機器センターには、最新型とはいえないが、往時は高次元の分析機器が今も大切に保存・使用されており、技官の説明からも職員は誇りと愛情をもって永年職務に精励されていることを感じた。大学統合など今後の試練にも、このような雰囲気はぜひ大切にしていただきたい。

また「大学概要」をはじめ院内表示はすべて英語で対訳されている。このような配慮が隅々まで行き届いていることに、敬意を表したい。

3)ドミニカ共和国、ベトナム社会主義共和国など、あまりfamiliarでない国々との学術交流あるいは医療支援事業は、予算措置の厳しい中にあって公的資金は期待できないかもしれない。しかしこのようないわば異色の活動は、同窓会組識を通じた援助を依頼してでも、ぜひ継続・発展していただきたいと願うものである。

4)教官任期制は、とくに独法化後された後は教官採用に際して主流になると思われる。助手の任期制導入により若手の人事刷新、活動の高揚は得られるであろう。全学的に、今後さらに上級教官に対しても摘要を期待したい。

5)創薬オフィス、MINCSの自由な供覧、学内情報センターでの情報伝達上の工夫など、心の通った新しい試みがなされている。

その他:学内に佐野文庫など、歴史を振り返ることのできる心和む場所が用意されていること、また些細かも知れぬが、テュートリアル教室や機器測定室に“飲食禁止”と朱書してあった。小事は大事の始まり、微笑ましくかつ貴学の細心な配慮に改めて感心した。

鹿児島大学生化学第1講座教授  佐伯 武頼

 ただいま、岡田謙一郎先生が大学運営に関して、詳しく述べられましたので、それ以外に気がつきました点を述べて責務を果たしたことにさせていただきます。

 「21世紀の大学像と今後の改革方策について」や21世紀医学・医療懇の答申などに謳われている、大学がなさねばならない改革は、ほぼすべてそれなりに実施されていると感じました。具体的には、教官評価、予算の傾斜配分、任期制など、十分とは言えないまでもそれなりに努力して進めておられます。

また、図書館24時間開館、チュートリアル室や実験実習機器センターの充実、よく訓練された実験実習機器センター教官等は特筆されるものであります。これらは、こじんまりとはしているが、単科大学の良さがでているものと考えます。また、執行部の指導力がよく発揮されていると感じました。

 逆に言いますと、一面では教授以外の教官の顔が見えないように思われます。特に自己評価冊子においてそのように感じます。教官の意識を上げるという意味からも、教官のさまざまな方面への参加を促進する方策が必要なのではないでしょうか。少なくとも冊子には、大学運営などに教官がどういう役割を果たし、どう考えているかが現れるような工夫も必要なのではないでしょうか。そのことによって、さらに教官のより強い協力も得られるのではないでしょうか。

 「大学の理念」があらゆる場所に揚げられており、全構成員に分るようにとの配慮がなされており、大変よいことだと感じました。しかし、大分医科大学が掲げておられる「理念」は、あまりに一般的ではないでしょうか。もっと、大分医科大学の特徴を強く出してもよいのではないか、これからは特にそうする必要もあるのではないかと感じました。建学の目的から考えますと地域医療の充実、地域医療に従事する人材の育成が重要かと思います。努力はされていますが、それにしては大分県民の子弟の入学者が少ないのではないでしょうか。建学の目的である地域医療を強調して地域医療に従事する人材育成の方向性をもっと積極的に行ってもよいのではないでしょうか。ただし、同時に大分県を含め、地域の医師の必要数の推定などの理論的根拠も明らかにする必要があろうかと考えます。

1.大学運営等