2.附属図書館

(1)図書館の利用状況

 1)入館者数及び貸出冊数

   図書館入館者の総数は、資料1のとおり平成12年度は126,734人で、前回の自己点検評価

  時の平成8年度に比べ20,819人、19.7%の増にとなっている。ただ、平成10年度以降はほぼ

  横ばいの状態が続いており、これは、平成8年度までに無人入退館システムの導入による24時

  間開館、日曜・祝日開館の実施を実現したことによると考えられる。

  一方、その中にあって、無人入退館システムにより入館した利用者は資料2のとおり増加を続

  け、平成12年度までの5年間で2倍強となり、全入館者数の17.3%を占めるに至った。なか

  でも、学部学生の割合は89.9%にまで達しており、前回の自己点検評価で指摘した「学生中心

  の利用」がほぼ定着したといえる。

  また、図書館資料の貸出冊数も資料3のとおり、平成8年度をピークにやや減少した後一定数

  で安定する傾向を見せている。

  平成13年2月から自動貸出装置を導入し、無人開館時も貸出が可能になったことによる入館

  者、貸出冊数の変化に今後注目する必要がある。

 2)相互利用件数

   文献複写件数については資料4のとおりであり、平成12年度の学外への複写依頼件数は平

  成8年度の18.3%増、複写受付件数は同じく5.1%減になっている。この結果、依頼件数と受

  付件数の割合は、平成8年度に3:2であったものが平成12年度には2:1となった。

  依頼件数の増加は、文献情報の検索環境がコンテンツ、機器の利用ともに一層充実したことに

  よる面が大きい。特に学部学生、大学院生の依頼件数が急速な伸びを見せており、平成12年

  度は前年の2倍以上の1,300件余りになっている。

  今後、電子ジャーナルの導入や平成13年6月からの学内LANを通しての文献複写申し込み

  サービスの開始による影響を見極めていく必要があり、また、本学が購入する学術雑誌(平成

  12年度の外国雑誌で434種類)が利用者の要求に合致しているかどうかの検証も必要である。

 3)図書館活動

 a.図書館広報誌「Live Lib!」は年1回発行し、大学構成員及び関係機関に図書館の動

  き等を広報しているが、平成12年度は2回の発行とし、うち1回(第25号、平成12年8月

  発行)は初めての試みとして、従来の構成とは変え、寄託された「佐野家文書」の特集号とし

  た。

  また、バックナンバーも含めて図書館のホームページに掲載し、広く学外へも情報を発信して

  いる。

 b.平成10年4月に「大分医科大学附属図書館概要」を創刊した。また、平成13年4月に

  2001/2002改訂版を作成した。

 c.平成10年4月に寄託契約を交わし医学史資料室に収蔵した「佐野家文書」について、平成

  11年及び12年の11月に公開展示会を行った。

 d.平成11年4月に、「大分医科大学図書館ボランティア受入要項」を制定し、同年9月より、

  ボランティアが活動を開始した。平成12年度は、4人が述べ230時間にわたり、カウンター

  業務や資料配架の補助、展示会の受付等の活動を行った。

 e.図書館資料を有効に活用してもらうために、平成13年4月より未製本学術雑誌の貸出対象

  を学部学生にも拡げた。

  また、自動貸出装置を導入し、平成13年2月より、20時以降の無人開館時にも貸出を開始し

  た。これにより、24時間、資料の貸出が可能となった。

 f.図書館資料の充実を図るために、平成12年7月に、「教育要項」に掲載された参考文献の所

  在状況調査を実施した。これにより図書館に未所蔵であることが判明した資料については、平

  成12年度に購入・整備した。

 g.学内教官の執筆による著作物等については、引き続き寄贈を教官に協力願い、教官寄贈図書

  として書庫に配置しているが、不十分な面もあるので、今後とも積極的な呼びかけが必要であ

  る。

(2)学術情報システムの整備・活用状況

 1)図書館業務の電算化

   附属図書館では、平成9年2月のシステム更新によりクライアント・サーバ方式を導入し、

  平成9年度以降受入・支払業務を含むハウスキーピングのトータルな運用を実現するとともに、

  目録情報・利用案内情報の学内LAN経由で学内外の利用者への提供を行ってきた。

  また、平成13年2月のシステム更新において、国立情報学研究所(Nii)の新システムに

  対応しトータル・ハウスキーピングの一層の機能向上による合理化・効率化を実現するととも

  に、ネットワークを介した文献複写依頼等情報サービスの高度化、電子図書館機能の充実を図

  った。

  今回の更新された新システムの主な特徴は以下のとおりである。

 a.Niiが提供する新NACSIS−CAT/ILLシステムに対応し、目録情報の自動登録

  やローカルシステムとのシームレスな連携が可能になった。また、NACSIS−IR、NA

  CSIS−ELS等Niiが提供する他のシステム・サービスへも対応した。

 b.LANを介した情報サービスとして、研究室から図書館へのオンライン依頼(文献複写・図

  書購入)システムを導入し、平成13年6月より運用を開始した。

 c.同時に導入した自動貸出装置と接続し、無人開館時の貸出を可能にした。

 2)学術情報システムの整備

 a.基盤・環境整備

   平成11年3月に、医学中央雑誌CDサーバシステムを導入した。また、留学生学術情報入

  手支援システムとしてインターネットの利用できるパソコン4台を2階に設置した。

  平成13年1月の医学情報センター(情報処理センター)ネットワークシステムの稼働に伴い、

  図書館内の情報基盤の整備として、図書館2階及び3階に無線の情報コンセント設置、グルー

  プ学習室にパソコンと情報コンセント、ビデオ室にビデオ視聴用パソコン5台を設置し、文献

  サーバの更新・増強を行った。また、基幹ネットワークの回線速度を10Mから100Mに増強し

  た。

 b.提供コンテンツの整備

   平成11年3月にCDサーバ(Windows NT)を新たに導入して、より多くの端末からアクセ

  スできる環境を整備し、CD−ROMコンテンツの利用拡大を図った。なお、医学中央雑誌に

  ついては、平成13年4月からは、Web版のサービス開始に伴いインターネットの利用に移行

  して機種に依存しないアクセス環境を実現し、格差の解消を図った。現在CDサーバでは、世

  界大百科事典、理科年表、Encyclopedia Americana、Encyclopedia of Bioethics、Journal Citation

  Report、Merck Index 及び Oxford English Dictionary を提供している。

  また、平成9年1月から、本格的な看護学の教育・研究活動を支援するために看護学関係デー

  タベースである CINHAL(Cumulative Index to Nursing & Allied Health Literature)を導入

  し、平成11年4月からEBMR(Evidence Based Medicine Review)の提供を開始した。

  なお、電子ジャーナルはオンライン・ジャーナルといわれるインターネットを利用した形態へ

  の移行が進み、本学においても 平成11年からElseviers Science社が提供するScience Direct

  の利用が可能となった。また、平成13年からは Academic Press社の電子ジャーナルサービ

  スであるIDEAL(International Digital Electronic Access Library)も導入するなど、現在

  約1,700タイトルの電子ジャーナルが提供できる環境が整い、学内教官には好評である。

(3)課題と今後の方策

 1)図書館資料費の有効活用

   図書館資料費は学内共通管理費の中から図書購入費として予算配分を受けるという枠組みは、

  前回の点検評価時と変わっていない。また、予算の総額にも大きな変化のない中で外国雑誌の

  値上がりと電子的資料の増加は続いており、図書の収集にも影響がでるなど、対応が課題とな

  っている。

 a.外国雑誌の選定

   平成9年度の外国雑誌購入費が、図書購入費当初配分の約60%を占める状況になったため、

  平成10年度分の雑誌について全面的見直しを行った。

  雑誌購入費の上限枠を設定し、各講座等より推薦された雑誌の中から、学内重複を避け、推薦

  の多かったもの、推薦順位の高かったものをコアジャーナルとして選定し、当面この範囲で外

  国雑誌を購入していくこととした。ただ、外国雑誌の価格の上昇は今後も続くものと思われ、

  将来的には再び見直し・削減を迫られるのは避けがたい。

  また、電子ジャーナルも、現段階では冊子体の購入が前提となっており、冊子体単独の購入に

  比べやや割高となる場合が多い。また価格上昇が見込まれることも雑誌の場合と同様である。

  こうした状況の中で利用可能なタイトルを削減しないための方法の一つとして、コンソーシア

  ムの形成による電子ジャーナルの共同利用が考えられる。図書館は、平成12年1月以来各種

  の電子ジャーナルを導入し、またコンソーシアムの形成にも参画しているが、他の大学図書館

  との連携・協力を今後一層積極的に進めていく必要がある。

 b.情報検索データベースの運用

   二次情報データベースは、機器の更新やインターネットの利用など環境整備も含めて引き続

  き積極的な導入・提供を行ってきた。

  しかし、これらのデータベースの購入経費も学術雑誌と同様に恒常的に値上がりするため、利

  用度の低いもの(Adonis:平成10年度)や他のデータベースで代替できるもの(Current

  Contents:平成12年度)を中止し、より必要度の高いものを新たに導入する(CINHAL:平成

  9年度等)といった見直しを適宜行った。

  しかし、雑誌記事索引等導入が望まれるものも残っており、今後も二次情報データベースを提

  供し安定的に教育・研究活動を支援していくためには、冊子体の抄録誌や索引誌の購読中止、

  経費の一部の利用度に応じた受益者負担等による購入経費の確保と、利用者のニーズの把握に

  よる提供データベースの再検討が必要である。

  さらに、これらのデータベースの有効利用を促進するためのガイダンス(現在はオリエンテー

  ションの一環)、操作手引き書の作成(医学中央雑誌等いくつかに作成済み)を一層進める必要

  がある。

 c.図書資料の収集

   雑誌や各種データベース導入費用の高騰のあおりを受けて、図書資料の収集は必ずしも十分

  でない状況が続いている。「教育要項」掲載資料は平成12年度に購入したものの、参考図書の

  新版への更新や基本図書の新刊購入は年間5〜600冊程度に止まっている。

  図書資料の収書計画の策定と予算の確保が今後の課題である。

 2)図書館ホームページの維持・管理

   図書館ホームページは、図書館がネットワークで提供するコンテンツの増加と相まって、内

  容が充実してきた。図書館概要、利用案内・マニュアル、目録、一次資料の提供の他、学外の

  情報・資料の検索機能も提供している。

  今後は、図書館及び学内外の動向・情報に目配りし、常に最新の情報を即時提供する体制を一

  層充実させることが課題である。

 3)職員の専門的知識・技能向上

   医学・医療情報及びその関連情報を扱う医学図書館では、医学・看護学あるいは生物学とい

  った主題知識が職員に要求され、また、オンラインで提供される学術情報の取扱いのためには、

  コンピュータ・ネットワークの構築・維持の知識・技能も必要である。

  現在の職員構成では通常業務との兼ね合いで難しい面もあるが、外部の各種研修会・セミナー

  への参加、館内研修の体系化を計画的に進める必要がある。さらに、広域人事交流の推進も人

  材の確保、個々のスキルアップの両面で有効な手段であろう。

 4)書庫スペース等の確保

   資料の自然増への対応やマルチメディアスペースの確保等のために、平成9年度に電動式集

  密書架の導入による学術雑誌バックナンバーの集中化と事務室の統廃合を行った。これにより、

  資料の収容力を増強し、より使いやすい資料配置を実現するとともに、医学史資料室を設置す

  ることができた。

  ただ、平成12年度末の段階で、資料の自然増により書庫スペースの余裕はほとんどない状態

  にあり、増築等が困難な現状にあっては、雑誌バックナンバーの電子ジャーナルによる利用、

  利用要求の無い資料・重複資料の不用決定等スペースのさらなる効率的利用を検討する必要が

  ある。

  また、車椅子での来館者への対応、医学史資料室の展示スペースの増設等、施設設備面での充

  実も今後の検討課題となっている。