3.保健管理センター
保健管理センターは、学生の健康保持増進、疾病の予防、健康に関する教育支援等、保健管理に
関する業務の充実を目的として平成8年4月に省令施設として設置された。
(1)職員配置
所長(併任:臨床講座の教授)、医師(専任講師) 1人、保健婦(専任) 1人、事務補佐員
(非常勤) 1人、学校医(併任:産婦人科医師 1人、精神科医師 1人、臨床心理士 1人)
計 3人
(2)主な業務内容
1)相談(身体面、精神面についての相談)
2)応急処置(かぜ、外傷、火傷、筋肉痛、頭痛、腹痛、下痢、発熱、生理痛その他)
3)休養(気分不良、体調不良)
4)健康管理(自己管理のための保健指導)
5)健康教育(健康料理教室、健康管理に関する講義など)
6)健康診断(定期健康診断、結核定期検診、健康診断書の発行)
7)保健管理センターニュース発行
(3)稼動状況
前回の自己点検・評価時の平成8年度は保健管理センターが開設された年であったため、フル
稼動はしていなかった。そのために、経過をわかりやすく見ることができるように、一部のデー
タについては、保健管理センターが開設された平成8年度から掲載した。
1)学生相談状況(資料1)
学生相談数は開設時より飛躍的に増加し、全国の保健管理センターの中でも有数の利用率の
高い施設となっている。メンタル相談数も着実に増え続けており、全相談数に占める割合が高
くなってきている。職員相談数(含投薬)も年間300前後あることは注目に値する。
2)学生定期健康診断受診状況(資料2)
学生定期健康診断受診率は平成8〜11年度は70数%であったが、結核定期検診の強化に基づ
き、大学として胸部レントゲン撮影を義務付けとした平成12年度は96.9%となった。
3)結核検診状況(資料3)
胸部レントゲン写真では、平成10、11、12年度に数名ずつ要精密検査がでている。平成11
年度には2名の要治療者がでたが、いずれも結核菌は塗沫、培養とも陰性であった。平成11年
度、12年度には臨床実習において排菌患者との接触があった学生の中から各々4名、6名の予
防内服者がでた。
臨床実習前のツ反検査を平成11年度から導入したが、結果は表に示すごとくである。2段階陰
性者に対してBCG接種を実施している。
4)保健管理センターからの診療情報提供書(紹介状)提出状況(資料5)
学生相談者の中から、保健管理センターでの応急処置や保健指導では対応できず、さらなる
治療や精査が必要な場合に、学内外の医療機関に紹介している。平成12年10月から保健管理
センターからの紹介状が正式に医療機関からの診療情報提供書として認められたのに伴い、本
学医学部附属病院の診療科を受診する場合の学生の経済的負担が軽減されたため紹介数が増加
したものと考えられる。
内科、皮膚科、整形外科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科への紹介が多く、内科的疾患では高血圧、
喘息、蛋白尿、血尿の精査などが多い傾向にある。また平成12年度はツ反強陽性者の経過観察
のための胸部レントゲン撮影を、附属病院を受診させて実施したために数が多くなっている。
附属病院のある保健管理センターとして、単なる応急処置にとどまらず慢性疾患のフォーロー
や手術適応の決定、髄膜炎、脊椎動静脈奇形出血、ダグラス窩血腫など手遅れにならずに早期
治療が必要な疾患についての適切な対応などレベルの高い対応ができていることは評価できる。
5)学校医の相談状況(資料4)
学校医は平成8年度は産婦人科と精神科の2名であったが、平成9年度から臨床心理士が加
わり3名となっている。年々相談件数は増えているが、定時の相談日だけでなく時間外や、緊
急時での対応、電話相談、相談学生のその後の外来での長期にわたるフォーローなど、データ
として見えて来ないものもあることを強調しておきたい。
6)設備状況(資料6)
(4)この4年間の評価すべき主な活動
1)業務マニュアル作成
保健管理センターとしての詳細な業務マニュアルを作成しており、毎年状況の変化に対応し
て更新している。
2)新入生合宿研修参加
新入生合宿研修に毎年スタッフとして参加している。医学科、看護学科新入生全員を対象に、
アルコールパッチテストを実施し、アルコールの害や検査結果に基づいた適切なアルコールの
飲み方について指導している。保健管理センターで指導するようになった平成9年以来、重症
の急性アルコール中毒の発生はない。
3)感染予防対策への積極的な取組
a.結核感染予防対策の強化
平成11年度から臨床実習前のツベルクリン反応(ツ反)検査、2段階ツ反陰性者へのBCG接
種、強陽性者に対し放射線部での胸部レントゲン撮影(直接)を導入した。さらに平成12年度
からは、新入生のツ反陰性者に対し再ツ反、強陽性者に対し放射線部での胸部レントゲン撮影
(直接)を4月の定期健診の際に実施することになった。また健診時の胸部レントゲン撮影は
結核定期検診と位置付けて義務化した。
平成12年度の医学部臨床実習前のオリエンテーションで実習中の結核感染予防について講義を
した。
b.感染予防対策のガイドラインの作成
・大分医科大学医学部学生を対象にした結核予防ガイドライン(保健管理センターホームペー
ジに掲載)
・臨床実習における結核感染予防対策マニュアル(保健管理センターホームページに掲載)
・実習中の血液汚染事故における対処法(保健管理センターホームページに掲載)
これらのガイドラインについて、他大学からガイドラインを作成するにあたり参考にさせてほ
しいという申し入れがあり、反響があった。
c.学内の感染予防対策委員会の委員を委託される。
平成11年10月から、保健管理センター専任教官が学内の感染予防対策委員を委託され、臨
床実習中の学生の結核排菌患者に関わる接触者検診や、針刺し事故への対処やインフルエンザ
の予防接種などが円滑に行われるようになった。
4)学生定期健康診断(含結核定期検診)の充実
a.受診率の増加
資料2にあるように、結核定期検診の一環として胸部レントゲン撮影が義務付けられたこと、
保健管理センターで未受診者への指導を強化したために学部生の受診率はほぼ100%近くとな
った。
b.全学あげての学生定期健康診断への協力強化
平成11年度から、学生への保健指導を充実させるために、従来臨床実習前に実施していた血
液検査を新入生の段階で実施することになり、検査部で血液検査(一次健診、二次健診)を実
施していただくことになった。また結核定期検診の導入に伴い、ツ反、BCGなども実施するよ
うになったために、従来から行われていた学生課職員及び内科講座の内科検診への協力に加え、
その他の臨床講座教官、看護学科教官、検査技師、放射線技師など述べ100名の教職員の協力
のもとに健診が行われるようになった。これに伴い二次健診も充実し、消化器専門医による腹
部超音波検査も導入され健診後の保健指導や附属病院外来への紹介などが円滑に行われるよう
になってきた。
c.学生定期健診後の管理マニュアルの作成
学生定期健診の充実のために管理マニュアルを作成し、各講座、学科、診療科へ配付した。
特に各診療科には保健管理センターから健診後に精査、治療のために学生を紹介する際に留意
しておいてほしい点や今後の管理上に必要な保健管理センターとの役割分担を明確にした。
5)健康料理教室
本学に入学して一人暮らしを始める学生も少なくないことから、附属病院栄養管理室の栄養
士の協力を得て、平成10年から一人暮らしの健康料理教室を開催してきた。年々参加者が増え、
好評である。料理の楽しさを体験してもらい、バランスの取れた食事を食べて健康に学生生活
を送っていくための支援をする企画として評価できる。
6)学校医懇談会開催
入学後まもない時期に主に新入生を対象に(他学年の参加も可)学校医との懇談会を開催し
ている。センター職員の手作りのケーキと飲みものを食べながらリラックスした雰囲気で、学
校医に日頃疑問に感じていることなどについて質問したり、講義では聞けない話を聞くことが
できる場として学生に好評である。
7)保健管理センターホームページ開設
人手不足からホームページの更新が年1回程度しかできない現状がある。
8)事務補佐員(非常勤)増員
平成10年度から学生健診の補助として1〜2カ月間であったが、平成12年度からは学生健
診だけでなく、日常業務の補佐として期間も延長された。平成13年度からは非常勤ではあるが、
期間が1年間となり専任2名という慢性的人的不足の改善に貢献している。
9)地域の活動への協力
a.挾間町きちょくれまつり
毎年専任保健婦が協力参加し、体脂肪測定及び保健指導を行っている。
b.姫島村住民の骨密度測定と健康調査(平成10年、11年)
c.大分大学健康セミナーで講義
d.その他医師、保健婦の立場で地域での講演や保健指導を行っている。
10)学内の共同研究
a.解剖実習の健康調査(ホルムアルデヒド曝露による人体障害)
解剖学講座第一、第二とともに平成10年度から研究を進めている。研究成果については、国
内外の学会に報告し、また学会誌などに論文を掲載した。さらに研究結果に基づき平成12年度
に解剖学実習室の換気改善工事を実施し、一定の効果をあげている。しかし、十分とはいえず
今後のさらなる対策が必要である。
11)設備の充実
a.トイレとシャワーの新設
平成10年度に保健管理センター内に男子トイレ1、女子トイレ1が新設され、気分不良時の
学生が保健管理センター外の職員トイレを利用しなくてはならない事態がなくなり、快適に利
用されている。シャワーについては、下半身の外傷や下痢や嘔吐などによる汚染を洗い流すた
めに活用されている。
b.所長室の移転
今までの所長室では、プライバシーが守りにくいという問題があったが、所長室が保健管理
センターに隣接した前印刷室に移転し、しかも保健管理センターとの境にドアを付けたため、
学校医の相談やプライバシーを守る必要がある日常の相談に活用されるようになった。
(5)今後の課題と問題点
1)保健管理センター所長を専任に。
現状ではセンター所長は併任であるが、センター専任の立場として教授会その他に参加して
いるわけではないので、保健管理センターの大学内での位置付けの重要性と独自性とは裏腹に、
発言権は非常に弱いものといわざるを得ない。したがって予算面や運営面で制約がある。大学
設置法改正で保健管理施設の教官が何らかの形で教授会に所属できることになったが、現状で
は無理である。独立行政法人化への方向性に対応していくためにも、センター所長を専任にす
ることを提案したい。
2)職員の健康管理も行っていく施設としていく。
現在のところ当保健管理センターの規定では、センターは学生の健康管理を行う施設とされ
ているが、資料1にもあるように、実質的に健康管理、保健指導を求めて来所する教職員は増
加している。また主任者研修その他で、心身面の健康管理に関する講義等も行っている。他に
その機能をはたす場所がないのであるから(附属病院は診断と治療が主)、センターが果たさな
ければならない機能である。教職員の健康管理担当の事務官が、センター所属になるなどの方
策を取れば可能と考える。
3)保健管理センター教官が健康管理学の講義を担当する。
学生の健康教育の要となる機関として、保健管理センターで系統的に講義を持っていく必要
がある。特に本学は将来の医療人を育成するという使命をもった大学であり、健康管理学はど
のような分野に進むにしても必要不可欠である。
4)学校医あるいは保健管理センター協力医の増員。
現在の学校医の産婦人科、精神科、臨床心理士の他に、内科、整形外科、歯科口腔外科、皮
膚科、耳鼻科など相談の希望がある。そこで学校医あるいは協力医として要請があった時に対
応できる体制にする。
5)保健管理センター職員の身の安全及び勤務条件の改善
全国の保健管理センターでも問題となっているが、学生の中に人格障害その他の精神異常に
より職員に危害を加える事例も報告されている。専任2人体制であり、1人になる機会もある
状態で万全の安全対策を取る必要がある。また非常勤1人が増員され、勤務条件がいくらか改
善された面はあるが、いまだに超過勤務を余儀なくされる日が多いので専任事務官配置などに
て改善策を検討する。