X 国際交流
1.学術交流協定
(1)ドミニカ共和国
○現状の点検
サントドミンゴ自治大学とは,平成元年12月14日に,ルイス・エドワルド・アイバール病
院とは,平成8年12月13日に学術協力協定を締結した。
サントドミンゴ自治大学からの訪問は,平成10年9月7日〜9日にイバン・ブルガー副学長
及びハイメ・バルガス日本総領事の訪問があり,ルイス・エドワルド・アイバール病院からは,
平成11年1月9日〜21日にボネ病院長及びラモン保健省大臣の訪問があった。
本学からサントドミンゴ自治大学への訪問は,平成10年10月に中山学長が,平成12年
10月に三舟副学長が訪問した。
○現状の評価
ドミニカ共和国からの留学生の受入れは,平成9年度から1名もなく交流が滞っている。研究
者の交流も学術交流の面では文部科学省科学研究費補助金による一部の講座に限定されており,
全学的に活発な交流とはいえない。ただし,国際協力事業の面からは,専門家の派遣,外国人受
託研修員の受入れが事業計画に沿って行われている。
2つの学術交流協定は,本学が従来からカリブ海地域を中心にした研究が多いことから研究者
個々の交流が協定として実を結んだものであるが,最近では国際協力としての関わりが強く学術
交流活動は一部研究者に限られている。
○将来の改善改革に向けた方策
本学は,アジアとカリブ海地域の研究を主目的としたセンターを設置して研究成果の飛躍的な
進展を図る計画がある。このセンターの設置により,カリブ海地域を対象にした研究体制は充実
することから,カリブ海地域の拠点として今後は本学と学術協定校との研究活動は飛躍的に進む
ことになる。
(2)中華人民共和国
○現状の点検
中国人民解放軍軍医進修学院(北京市)および河北医科大学(旧 河北医学院、石家荘市)と
の間に、1992年に研究者および教育者の交流と学術資料の交換等を目的として学術協力協定
を締結し、以後何回か更新を行い現在に至っている。中国人民解放軍軍医進修学院とは本学から
18名の研究者の派遣(派遣期間:約1週間)、受け入れ研究者12名(滞在期間:4−6か月間)
があった。
河北医科大学とは本学から18名の研究者の派遣(滞在期間:約1週間)、受け入れ研究者11
名(滞在期間:4−6か月間)、さらに97年に学生交流に関する覚書、98年に看護学科を含め
る覚書交換を行い、98年から4名の学生を受け入れている(滞在期間:6か月間)。
中国人民解放軍進修医学院から院長以下数名の訪問団が2回、河北医科大学からは学長以下数
名の訪問団が6回来学され、今後の学術交流の在り方等について懇談した。
○現状の評価および問題点、改善策
双方で合意された学術交流の目的は達成されているが、いくつかの問題点や将来に向けた改善
策等があげられる。
・交流資金(旅費、滞在費等を含む)の確保
・学術交流内容、研究・教育内容の充実
・研究生、学生の受け入れ体制の整備
・中日共同研究課題の設定
(1)ドミニカ共和国への国際協力について
○現状の点検
ドミニカ共和国との関係は,昭和63年国立ルイス・エドワルド・アイバール病院内にわが国
の無償資金協力により消化器センターが建設された時から始まった。平成元年からフォローアッ
プを含め平成8年末までにプロジェクト方式技術協力による「消化器疾患研究・臨床プロジェク
ト」を引き受け,消化器疾患臨床活動,臨床検査機能,疫学研究活動の強化に大きな成果を挙げ
た。
一方,ドミニカ共和国の医療分野全体は,国内の貧富の格差や医療従事者の技術不足により依
然として医療サービスに限界があった。特に,画像診断分野の設備や技術が著しかった。このよ
うな状況から,同国保健省は我が国に画像診断従事者の育成を目的としたプロジェクト方式技術
協力を養成してきた。
このプロジェクトを開始するにあたり,アイバール病院内にある既設のレジデント・コースを
すべて新カリキュラムによる系統的教育法に変換するため「CTスキャン等画像診断機器の設置
と診断技術の教育」及び「感染症等の診断能力向上と撲滅・予防対策の向上のため公衆衛生教育」
の二つの目的を掲げ,その目的のため延べ7名からなる調査団を4回現地に派遣し事前調査を実
施した結果,平成10年10月8日,実施協議にてドミニカ共和国側と合意に達し,「ドミニカ共
和国医学教育プロジェクト」がスタートした。
派遣者は,放射線医学教官,疫学教官,放射線部技師を中心に別紙資料のとおり派遣した。ま
た,ドミニカ共和国からの外国人受託研修員は,放射線医学医師を中心に年間3名を受入れた。
○現状の評価
専門家の派遣については,現地教育カリキュラムの継続性を重視する観点から1年以上の長期
派遣専門家として派遣することが望まれた。しかし,本学の放射線医学教官を1年以上派遣する
ことは放射線医学講座の運営に支障をきたすことから,年間3名の短期派遣専門家をローテート
して派遣した。疫学教官及び放射線部技師は,長期派遣専門家として派遣ができた。平成13年
度の看護婦も長期派遣専門家として派遣できた。
現在のところ,ドミニカ共和国とのプロジェクトが2例目でもあり,プロジェクトに対する理
解も深く,本学の専門家の派遣,外国人受託研修員の受入等は協力的に進んできた。
○将来の改善改革に向けた方策
本プロジェクトは,ドミニカ共和国の積極的な協力のもと国際協力事業団のプロジェクトとし
て計画どおり遂行されていることから,本プロジェクトの改善改革に向けた方策は国際協力事業
団と協議のうえ講じることになる。具体的には,平成14年度にプロジェクトの中間評価をする
ことになっている。
(2)ベトナム社会主義共和国
1)日本学術振興会拠点大学方式による学術交流プログラムの協力大学としての交流事業(日本
側拠点大学 長崎大学熱帯医学研究所)
協力研究者 医学部教授 西園 晃(微生物学:連絡責任者)
副学長 三舟 求眞人
医学部教授 牧野 芳大(公衆衛生医学第1)
医学部助教授 江下 優樹(感染予防医学)
○現状の点検
ベトナム国立衛生疫学研究所との間で「熱帯医学/熱帯性感染症の新興・再興要因とそれに基
づく防除対策に関する研究」を大課題として学術交流を進め、そのなかの5つの小課題に分類さ
れたうち、人畜共通感染症に関する研究と蚊媒介性疾患に関する研究を本学が担当している。
a.研究者交流
平成12年度 招聘研究者、派遣研究者として双方より1名づつの交流を行った
b.セミナーの開催
平成12年度 日本にて1回開催(於 長崎市)
c.共同研究(平成12年度)
狂犬病サンプル収集についてのシステムづくり
○現状の評価
初年度(平成12年度)は、特に狂犬病ウイルス感染に関して双方より1名ずつの研究者交流が
行われ、ベトナムにおける狂犬病の罹患率、ワクチン接種率の把握、狂犬の捕獲とその診断法に
ついての現状確認を行い、今後に向けての双方の役割について検討した。
○将来の改善改革に向けた方策
本プロジェクトは平成12年度からスタートしたばかりだが、今後5年から10年間という長期
にわたる継続が予定されている。平成13年度以降は日本側派遣研究者は、それぞれのカウンター
パートが属する機関に赴きフィールド調査への参加とサンプル収集、現地での処理と分析を行う。
一方ベトナム側からは各課題につき数名づつの研究者が、分析のための資料を持って来日し、主
に日本側カウンターパートの所属機関において、より詳細な分析を共同で実施する。特にベトナ
ムからの受け入れに関しては、予算事情の許す限りより長く滞日して研究成果が挙げられるよう
に配慮する。
2)「ベトナムに於ける頭頸部癌治療と音声機能リハビリテーションを支援するボランティアの
会」の活動の一環としての耳鼻咽喉科学講座としての交流事業
協力研究者 医学部教授 鈴木 正志(耳鼻咽喉科学)
副学長 茂木 五郎
医学部教授 倉掛 重精(人間生物学)
医学部講師 須小 毅(耳鼻咽喉科学)
医学部助手 吉田 和秀(耳鼻咽喉科学)
○現状の点検
ベトナム社会主義共和国ホーチミン市耳鼻咽喉科センターとの間で「ベトナムに於ける頭頸部
外科診療支援」を課題として頭頸部癌治療と音声リハビリテーション(食道発声)の指導から頭
頸部外科診療一般についての指導・相談・援助を行う。
a.研究者交流
平成12年度 招聘研究者として3名
派遣研究者として6名(のべ8名)
b.研修会の開催
平成12年度 ベトナムにて1回開催
○現状の評価
ホーチミン市において、主に喉頭癌、唾液腺腫瘍、中耳炎に対する手術と食道発声についての
講義・手術指導・訓練指導を年3回行っており、ベトナムでは一般化していない喉頭半切除術や
鼓室形成術が導入されはじめ、食道発声ではホーチミン市喉頭摘出者クラブも発足しその活動が
軌道に乗り始めている。
○将来の改善改革に向けた方策
今後は首都ハノイ市においても同様の活動を展開し、活動資金もボランティアの会だけでなく、
公的・私的支援金の公募に応募し活動を広げたいと考えている。