U 研究体制及び研究支援体制
1.研究体制
(1)研究課題を設定した研究体制の有無と現状
学内の複数講座による連携・協同研究に対し、学長裁量経費から「教育研究改善改革プロジェクト」として、毎年約10件に対し研究費が配分されている。この制度による各研究はそれぞれ相応の成果を挙げている.特に、保健管理センターと解剖学講座1、2の協同研究「医学部学生の解剖実習におけるホルムアルデヒド曝露に関する研究」からは、ホルムアルデヒドに対する過敏反応を呈する学生がかなり存在することが明らかとなり、実習室の換気装置の改善により身体症状やアレルギー検査値の一定の改善が得られた.この研究成果は文部科学省による、ホルムアルデヒド過敏症の予防に向けた全国レベルでの医学部解剖実習室内の空気中化学物質調査の契機となるなど、大きな社会的貢献に繋がった。
一方,基礎・臨床の枠を越えた学際的共同研究の実施や、関連する研究を行っている複数の講座等を一つの研究部門にまとめて研究の効率化と質の向上を図るため、共同研究ワーキンググループを設置し包括的な共同研究部門名のアンケートを実施した。
(2)研究経費
1)学長裁量経費等の学内研究助成金制度の有無と現状
臨床研究の推進を目的に学内から公募した臨床研究課題10件程度に毎年約5千万円が配分されてい
る。また、先述の「教育研究改善改革プロジェクト」に加え、減り張りの利いた教育研究基盤校費の
配分基準及びその他学内予算配分の協議を行う予算配分委員会を平成12年6月に設置した。
2)医学研究費取得状況
(資料1,2,3,4参照)
(3)人的体制
1)平成9年5月より優秀な大学院生に対し,本学が行う研究プロジェクト等に研究補助者として参画
させ,研究活動の効果的な推進を図るとともに,研究体制の充実及び研究補助業務を通じて若手研究
者としての研究遂行能力の育成を図るために,「リサーチ・アシスタント制度」を導入した.
2)平成10年度に約30名の教室系技術職員で技術部を結成するとともに,同部職員の技術水準を高め、
能力・資質の向上及び自己啓発を図るための研修を開始した。研修は一般講義、実践セミナー、専門
講義、技術実習、施設見学,学会・研究会での報告及び技術発表等から構成され、1年間に20時間
以上の研修を義務付けている。
3)若手教官の人事を流動化し、教育・研究の活性化を目的として、平成12年10月から助手の5年
任期制を採用した。採用5年後に、教育並びに研究業績評価を行い、再採用は1回のみ可能としてい
る。この規定の実際の運用は平成13年度から始まっている。
(4)研究施設
1)共同研究施設
学内全研究者が利用できる施設として、実験実習機器センター、動物実験施設、RI実験施設及び
医学情報センターのよりいっそうの充実を図っている。特に、実験実習機器センターは学内外のいろ
いろな分野の研究者が一体となって学際研究を行う共同実験研究センターの性格を持たすべく計画し
ている。
@医学部附属実験実習機器センター
電子顕微鏡等の形態観察機器を中心として構成された分子形態部門、精密化学分析機器が中心の
分子生命部門、遺伝子組み替え実験室を所有する生命工学部門、細胞自動解析装置を中心とした細
胞工学部門、核磁気共鳴装置を中心とした医用電子部門、及び各種の映像処理機器を有する映像情
報部門の6部門より構成され、助教授1、教務員2、技術専門職員2、技官2、事務官2の他に併
任教授または助教授6を配置して運営にあたっている。毎年、数多くのセミナー、新しい機器のデ
モや演習を行うと共に、各講座の研究支援あるいはセンター独自の研究も行っており、いずれの部
門も利用者数は増加している(資料5参照)。特に最近は、医学教育用資料のAV化や大学病院間衛
星放送(MINCS)を使用した教育の機会が増加したために、映像情報部門の利用増加が著しい。しか
し,一部の機器では更新が必要となっているものもある。
A医学部附属動物実験施設(資料6参照)
総面積3,118 m2の動物実験施設は各種の実験動物の飼育や管理設備を有し、サル専用飼育棟や、
P2レベル(144 m2)及びP3レベル(24 m2)の組み替えDNA実験室などから構成され、助教授1、
助手1、技術専門職員2、技官2と併任施設長1が配置されている。当施設では各講座の研究支援
や各種の研修会の開催、大学院、学部学生の教育にあたると共に、実験動物の感染症あるいは人獣
共通感染症の診断技術の開発と確立に向けた研究も積極的に行っている。平成11年11月には実
験動物の導入及び実験結果の公開についての整備を測るために同施設利用細則を改訂した。
B医学部附属RI実験施設(資料7参照)
利用者の増加から平成6年度に1,300 m2に増設し,教務員1、技官1、兼任の施設長と助教授1
を配置し運営にあたっている.バイオイメージングアナライザ、液体シンチレイションカウンタ、
ガンマカウンタ等の共同利用機器が設置され3H他の核種を使用した研究が行われている。また、85
m2のP2レベル組み替えDNA実験室も整備され,各講座の研究支援を行うと共に、各種の研修会の開
催等の活発に行っている。しかし,環境汚染の問題から,研究手段としてアイソトープを利用しな
い手法が多く利用されるようになったために,当施設の利用状況は、平成10年度をピークにやや
低下傾向が認められる。
C大分医科大学医学情報センター
医学情報センターとして設立されたが、平成11年4月に附属病院特殊診療施設として医療情報
部が独立し,さらに、平成12年4月からは学内共同利用施設となった.当センターが構築し運用
管理にあたる学内LANは医学教育や研究に使用されている。
2)保健管理センター
保健管理センターは学生の心身の健康に関する相談、保険・健康教育の場として設立されたが、前
述のごとく解剖実習におけるホルムアルデヒド暴露による人体障害に関する研究はシックハウス症候
群の研究などに応用され、学際的研究が進んでいる。
3)附属病院
@附属病院は604床を有し、年間約20万人の外来患者と延べ20万人の入院患者(平成12年度
病床稼働率94%)の治療を行い、その際の処方数は約68万件に登る。また,同病院の検査部は約
140万件の検査を、手術部は約4千件の手術を、放射線部は約7万件の画像診断を、病理部は約
1万件の診断を年間に行っている(平成12年度)。
A適切な臨床研究を推進するために附属病院臨床研究審査委員会を平成9年5月に設置したが、平成
10年3月には看護部職員を、平成11年6月には看護学科教官も同委員会委員に任命した。また、
平成10年3月には大分医科大学医学部附属病院における臨床研究の受託研究取扱規程を制定すると
ともに、平成11年4月には臨床薬理センター内に「創薬オフィス」を設置し新薬の臨床試験の支援
を行っている。
4)附属図書館機能の充実
平成6年に24時間無人開館制度を導入した附属図書館は利用者も年間10万人を越し、平成13
年2月には自動貸出装置も導入されて深夜の無人貸出が可能となった。蔵書冊数は10万3千冊を越
えるとともに、平成11年3月にはCDサーバ・システムも完備されて電子図書館システムの構築がな
され、館内の端末からばかりでなくLANを介して学内研究室からも利用可能になった。
2.研究支援体制:学外研究機関に対する支援
(1)国際交流では平成元年よりドミニカ共和国サントドミンゴ自治大学と交流協定を締結し、その後同
国のルイス・エドワルド・アイバール病院、中華人民共和国の河北医科大学や中国人民解放軍軍医進
修学院とも交流協定を結ぶとともに、中華人民共和国や中央アメリカなどから9名の研究者を受け入
れている(平成12年5月1日現在)