V 研究内容及び水準
―全学的な点検・評価―
基礎医学系講座
1.インパクトファクターと代表論文(資料8参照)
4年間の合計で100以上のスコアを記録したのは生理学第2(131.205)及び病理学第2(102.431)である。単独の論文で10以上のスコアは病理学第2のImmunol. Today(17.134)、J. Exp. Med.(15.651)、生化学第二のAm. J. Hum. Genet.(10.426)、公衆衛生第1のAnn. Intern. Med.(10.097)の4編のみである。5〜10のスコアの論文を出版した教室は生理学第1(1編)、生理学第2(5編)、生化学第1(3編)、生化学第2(2編)、病理学第2(5編)、微生物学(2編)である。論文1編あたりの平均スコアの最高は4.656(病理学第2)であり、半数の教室では1点未満である。一般的に形態系や社会医学系のジャーナルはインパクトファクターが低めであるので、これらの系では4年間の合計50以上を、それ以外では100以上を及第点とすると、及第に達している教室は上記の生理学第2及び病理学第2の2教室に過ぎない。しかし、分野によってはインパクトファクターが0に近い論文でも重要なものがあるので、後述の講座別の自己点検・評価を参照されたい。しかし、我々の今後の方針としては、いずれの分野であれデータを精選し完成度の高い論文をめざすべきと考えている。また、現在、各専門分野の垣根を越えて、研究内容や実験手技がボーダレスである。形態系においては生理、生化学、分子・細胞生物学的手法や知識は必須であり、生理、生化学系ではその逆が必要である。また、社会医学系の研究においても、形態学的或いは分子・細胞生物学的技術の導入は重要である。及第点に達していない多くの教室では以上の点を考慮にいれて、研究者の意識の向上や研究環境の改善が必要である。
2.科学研究費補助金及び民間研究補助金等の獲得状況(資料9参照)
国の科研費の総額が毎年増額されているにもかかわらず、本学の平成9〜12年度における総額は約一億円前後で推移している。新規採択状況は全国レベルに比し毎年低い。全学の中で基礎講座の占める金額の割合は三分の一程度であり、毎年の新規採択の件数は約20件である。この四年間で特定領域研究は1件(病理学第2、平成12年度)、重点領域研究は1件(生化学第1、平成9年度)が採択された。また、基盤研究(B)の採択は4件(平成9年度)、4件(平成10年度)、5件(平成11年度)、3件(平成12年度)と毎年4件程度が採択されている。また、民間研究補助金等を生理学第1(2件)、生理学第2(4件)、生化学第1(4件)、生化学第2(2件)、公衆衛生第1(4件)、公衆衛生第2(1件)の教室が獲得している。今後、評価結果に応じた資金配分や競争的資金が増加するなかで、各教官の研究のレベルアップをし、それをもとに研究費補助金を獲得し、さらに研究を飛躍させていくことが必要である。
3.学術賞等の受賞状況(資料10参照)
生理学第2、微生物学及び公衆衛生第2教室において各々1件づつの学術賞の受賞があった。
4.共同研究の実施状況
各教室において学内、国内、国外の機関と積極的に共同研究を実施している。特にフィールドワークを必要とする公衆衛生学や感染予防医学教室において顕著である。今後は研究内容や方法の多様化により、一層の共同研究の必要性がある。
5.受託研究等の実施状況(資料2参照)
厚生省より公衆衛生第1に3件、又、県や民間会社等より解剖学第1(2件)、生理学第2(1件)、薬理学(2件)、公衆衛生第1(2件)、公衆衛生第2(4件)、感染予防医学(3件)の各教室に受託研究の依頼があった。また、生理学第1では理化学研究所との共同研究を行った。現在、民間会社からの受託研究は相手方からの研究内容等について、その意向が強い傾向にある。今後は基礎研究の成果を実用化していく為に、平等な立場で積極的に情報やアイデアを提供しあって、産学共同の研究成果を挙げていくことが重要である。
6.組換えDNA実験の状況(資料11参照)
年度による増減はあるものの基礎系教室において、毎年30人程度が組換えDNA実験を行っているが、決して多い数字ではない。組換えDNA実験を取り入れることにより実験方法や内容の選択の幅を広げることができる。従って、実験者が増加することにより、本学における研究の質が高まると思われる。
7.新聞掲載やラジオ、テレビ、放送大学等からの放送
公衆衛生医学第2では大分合同新聞に「公衆・衛生医学の話」を17回にわたって連載した。また、感染予防医学では社会的に注目されている感染症の話題について新聞及びテレビより取材をうけた。今後、開かれた大学をめざす為、専門性の高い内容をわかりやすく一般の人達に、マスメデイアを通じて伝えていくことは重要なことである。
8.大学院生の人数(資料12参照)
医学科全体では定員の30名に近い人数が入学している。そのうちで基礎系の教室で研究を行っている者は約三分の一である。その中には中国をはじめとする外国からの国費及び私費の留学生が各学年1〜数名含まれている。基礎系に所属する大学院生は留学生を除いて、多くは臨床系講座からの受け入れである。将来、臨床家をめざす人でも、将来の医療を見据えて、基礎研究を行うことは重要なことであり、もっと増加すべきであると考える。また、本学では医学部(科)出身で基礎医学を志す人が極めて少ない状況である。各教室は積極的に基礎医学指向の学生を探しだす努力をすると共に、魅力ある質の高い研究テーマを持つべきである。
9.地域活動の実施状況
公衆衛生医学や感染予防医学等の社会医学系や感染症を専門とする教室による講義やセミナーが県内外各地で活発に行われている。また、ドミニカ共和国医学教育プロジェクトの一環として現地で講義を行ったり(解剖学第1)、疫学研究を行っている(微生物、公衆衛生医学第1、公衆衛生医学第2、感染予防医学)。今後益々、ドミニカ共和国をはじめ、中国や東南アジアの諸国に対する医学技術の援助や啓蒙活動を各専門の立場より発展させていくべきである。
10.国際シンポジウム主催状況
平成12年9月に、生理学第2による「大分心臓電気生理国際シンポジウム」が大分市で開催された。
11.国外への研究者派遣状況(資料13,14参照)
文部省在外研究員2名(平成10、12年度)、国際研究プロジェクトへの派遣1名(平成9〜11年度)、国際研究集会派遣研究員1名(平成9年度)である。
12.国外からの研究者の招致状況(資料15,16参照)
研究員として3名(平成9年度)、1名(平成10年度)、3名(平成11年度)、2名(平成12年度)を受け入れており、この中には学術協定を結んでいる、河北医科大学からの2名および軍医進修学院からの1名が含まれている。これら協定校をはじめ、中国、東南アジアの大学の研究室等における基礎医学研究は資金面や技術面での問題のため遅れている。しかし、彼等は基礎研究に強い熱意をもっており、今後もこれらの留学生を積極的に受け入れていくべきである。又、逆に欧米より最新の知識や技術をもった若手研究者を招聘し、本学の研究室の活性化をはかることも必要である。